第8話父&友人②
「と、まあ、そんなやりとりがありましたわ。」
「ははは、そうかそうか。ん?なぜ不満な顔をしているのだ」
あら、顔に出ていましたの?
「ヴィクター様の『僕』呼び、『私』になってしまいまして…」
気に入っていましたのに。
「お前にふさわしくあろうとしているのではないか?よいことだ。はは、変わったヴィクター君に早く会いたいものだ。それにしても、セレナは令嬢たちの処遇が本当に悲しいのか?」
「いいえ?ヴィクター様が悲しい思いをしたことが悲しいだけですわ。」
変なお父様。
*****
「うるさい羽虫がいなくなってだいぶ過ごしやすくなったわね、セレナ」
「まあ、口が悪いですわよ。レティシア。」
授業が終わり、学院のサロンでレティシアと過ごす。
「そうそう、あなたの婚約者様に会ったけど、すごいわね!あれは別人ではないかしら。『セレナとこれからも仲良くしてくれ。』と輝くような笑顔で頼まれたわ。」
「ヴィクター様が?ふふ」
「…アルマンド公爵令息様の変わりようにも驚いたけど、…あなたの変化にも、一応驚いているのよ、私。」
あら、ヴィクター様の愛らしさを伝えすぎたかしら。あんななついている子犬みたいな方、愛でるに決まっておりますわ。
「さて、次の『ざまぁ』は…あの方でしょうね、時期的に。」
「そうですわね、そろそろ騒ぎだす頃でしょう。冬季休暇前のテストの時期ですもの。」
アレクシ・マリアーノ侯爵令息。
同じクラスで、常に私と首位を争うお方。まあ、首位を譲ったことは一度もありませんけど。
実力で勝ち取っているというのに、毎回『こんな僅差で負けるなどありえない』『不正だ、汚い手を使ってテストの内容を手に入れているのではないか』『怪しい動きをしているのを見た、カンニングだろう』と、私の評判を傷付けるのに必死だ。
成績に関する噂や陰口、嘘の情報を広めているのは、彼だろう。
ヴィクター様は、今それを調べてくださっていると、私は予想している。
「全く、私たちと同じAクラスなのに王子と仲がいいとか。勉強はできても頭はよろしくないのね、きっと。」
「レティシア、彼は宰相を狙っているのですもの。王子、婚約者にすり寄るのは当然かもしれないですわよ。」
実は、王子の婚約者から外れた時、マリアーノ侯爵令息様との婚約の話も挙がっていた。よかったわ、安易に『学問が好きそうだからお話が合うかも』などと思わなくて。
家柄でヴィクター様を選んだ当時のお父様と私、見る目あるわ、結果、大当たりですもの。
優雅に紅茶を飲んでいたレティシアがため息をつく。
「いやですわね。王子をたしなめることができないご学友が次期宰相。あの王子が王でミレーナが王妃でしょ?宰相が彼…。この国も終わりね。あとは、あなたの計画がうまくいくことを祈るのみ。どちらにしても、私は隣国に嫁ぐから別に構わないのですけど。」
隣国の第2皇子が婚約者だからって、他人事のように言って。人生どうなるかわかりませんわよ。
「セレナが、どれだけ強大な存在か、そろそろマリアーノ侯爵令息様は、理解するといいのよ。」
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