第9話井の中の蛙

***



「ほら見てセレナ。さすがね!やはり首位でしたわ。おめでとう。」



「ありがとう。そして、当然のようにこちらを睨んでいる方たちがいますわね。」



学力テストの結果が貼り出され、レティシアと共にそれを見に来た。

2位は…僅差で、マリアーノ侯爵令息様ね。まあ、私は満点ですけど。



「…今度はどんな卑怯な手を使ったんだ」

「ドミニク、気を落とすな。ホフマン家の娘だぞ。実力ではないことは明らかだ。」

「そうですよ、気にしたら負けですよ。正当な評価じゃないのですから。」


傍にいる王子とミレーナは欄外なのだから気にした方がよいのではなくて?それにしても取り巻きたちがあんな目に遭ったのに、ミレーナ、通常通りで驚くわ。



「ホフマン伯爵令嬢!今日という今日は我慢ができない。私が君に負けるわけがないんだ。化けの皮を剥いでやる!!」


怒りの表情でこちらに近寄り、何を言いだすのかと思えば…


「そうだな、学院の試験では公正にかける。そうだ、王宮の文官長に試験問題を作ってもらい、2人で争ってみるというのはどうだ。」


よいですねと3人で頷き合っていますが、学院の先生方に本当に失礼ですわよ。

ほら引きつった顔で見ている先生方が数名。知りませんわよ、私。



「私は構いませんけど、負けたらどうするのです?」


「は!私がか?負けるわけがないだろう。負けたら退学でもいいぞ。しかしその条件は、ホフマン伯爵令嬢、あなたにも当てはまることになるがな」



目の前からいなくなるのは魅力的ですわね。



「では、書面に残しましょう。退学は、可哀そうですから…隣国の全寮制の学院で1年生からやり直すというのはどうでしょう。」


「何が、可哀そうだ。行くのはあなただ。目にも当てられないくらいの差で負けたら、卑怯な手を使い成績を改ざんしたと、皆の前で言ってもらう!」



はいはい、それでいいですわよ。



騒ぎを聞きつけたのか、ヴィクター様が慌ててやってきた。

「これは、いったいどういう状況だ。」


でも、貴族は廊下を走ってはいけませんわ。ふふふ。

周りで見ていた教師が、ヴィクター様に説明をする。



「…そうか。またセレナを責めたのか。マリアーノ侯爵令息、今回の試験。Aクラスに監督官が、いつもより多かったのに気付いていたか?」

怒りをこらえた表情でヴィクター様がお話になる。



そういえばそうでしたわね。



「君が卑怯な真似と騒ぐから、不正が行われないように多くの目で監督してもらった…結果不正など行われていなかった!」



『セレナに言ってなくてごめんね』と小声で言うヴィクター様。



「っ!いや、しかし、事前に問題を手に入れていたということも…そうだ多めの寄付金とか…賄賂とか」


「はっ!この学院は王立だぞ。そんな馬鹿なことする教師がいるわけないだろう。寄付金も一律だ。それとも何か?王家の監督不行き届きだとでも言いたいのか!」


いや、あの、その と、言いよどむマリアーノ侯爵令息様。王子とミレーナは、そっと後ろに下がり…黙る。貝のようですわね。



「な、なにやら誤解があったようだ。すまなかった…ホフマン伯爵令嬢」


分が悪いと判断したのか、謝罪をするマリアーノ侯爵令息様。


許さなくていいんだよという顔でこちらを見るヴィクター様。ならば返答は一つ。




「謝罪を受け入れますわ。」

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