第3話謂われなき非難
王家のお金で教育を受けたのだから、王子の婚約者にならずともそれなりの地位のある方の婚約者になることはわかっていた。それが、私の場合、ヴィクター・アルマンド公爵令息。公爵家の次男で我が伯爵家に婿入りすることになっている。
この方、私、というより誰に対しても関心を持たず、5秒以上話せたことにもびっくりしたわ。
まあ、私の目的の邪魔にならないのならそれでよろしいですわ、くらいにしか思っていませんでしたのに・・・
*****
「…でね、記憶を取り戻したら、そこに美しい令嬢がいて、僕の婚約者なんだって気付いたら…うれしさで気を失っちゃったんだよ。なーんて、あはは。」
…ん?誰?この目がキラキラした陽気なお方は。ミステリアスはどこへ行った…太陽みたいな方に変わってしまったわ。
…太陽の光って当たりすぎると疲れるのよね。お見舞いに来たばかりだけど、帰ろうかしら。
「転生すると大体そこは物語の世界って決まっていてね、でも・・・ごめん、僕そういう物語に興味がなくて。ここの世界がどんな話なのか分からないのだよ。」
あら?まだ頭が混乱しているのかしら。不思議なことを言うわね。あらあら、しゅんとしている姿、愛らしい。もう少し居ることにしますわ。
「明日のことなど誰も知りませんわ。人生は作っていくものですよ。」
「セレナ!君はとっても素敵なことを言うね。ああ、きっと君は、この世界のヒロインなんだ。」
階段から落ちた日も思ったけど、この人、私の名前を知っていたのね。そして、いつの間に呼び捨て。
「セレナはショックを受けるかもしれないけど、大事なことだから聞いて。実はね…君は謂れなき非難をうけているんだ…」
「謂れなき非難ですか?」
知っていましてよ。全くショックじゃありませんけど。
「そう…アレクやミレーナ嬢は、君に悪意があるし、アレクやミレーナ嬢の友達だって…君への態度はひどすぎる。断罪…そうだ、濡れ衣を着せられて断罪があるかもしれない!!大変だ!!」
あの人たちが、私に?どんな幼稚な断罪をするのかしら。
「でも、安心して!僕が一緒にざまぁをするから」
ざまぁ???
「物語の中で、悪意をもって振る舞ったり、陰謀を企んだりしている人は、最終的にはその行動が裏目に出る。不幸な結末に至ったり、報いを受けたり…それが『ざまぁ』だよ。」
‥‥‥‥。
「そうと決まったら、うん。僕のセレナが清廉潔白だという証拠を集めなくては!ああ、明日から忙しくなる。」
私の婚約者様は、プラチナの髪をなびかせ、春の陽光のような美しい笑顔を浮かべた。
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