第19話王太子とミレーナの決意
広々とした学園の中庭に、冬の冷たい風が吹き抜ける。ミレーナと王太子は、古い石造りの噴水のそばに腰を下ろしていた。
「ああ、オレリアが可哀想…」
この国で結婚式もせず出て行った妹を思い、さめざめと泣くミレーナに寄り添い、慰める。
ミレーナの妹が、あの新聞の噂のせいで、年の離れた男と婚姻をしてこの国から出て行ったのは昨日のことだ。
くそ!ヴィクターめ余計なことを!!ああ、怒りがわく。
ミレーナの父によると、噂をごまかすため致し方なかったと。唯一の救いは、相手が商人とはいえオレリアのことを慕っている裕福な子爵だということだ。金?地位?愛に必要なのは、互いに想い合うことだろ!
しかし、『これは王太子殿下とミレーナのためでもあります』と言われたら押し黙るしかない。オレリアをたきつけたのは私たちだ。これを皆に知られるわけにはいかない。
ミレーナは涙を拭いながら、私に尋ねた。
「アレク様…私これから、どうすれば…お友達も妹もいなくなってしまいましたわ。マリアーノ侯爵令息様も留学してしまいましたし…」
確かにここ数ヵ月で私たちの周りから、一気に人がいなくなった。
マリアーノ侯爵令息…ダニエルは、セレナに負けたというイメージが強すぎて、私の側近はもう無理だろう。まあ、あれだけ大口をたたいて負けたのだからしょうがない。優秀な男で、私によく従っていたのだが…残念だ。
そうなると、卒業後、王族としてこの国を率いていくためには優秀な学友とのつながりが足りない…優秀で私たちを支えてくれる、絶対的な味方である友が必要だ。
「…ミレーナ、3か月後クラス分けの前に試験があるな。」
「はい…?」
ミレーナは一瞬驚いたように目を見開いた。
「私たちは最終学年、Aクラスにならなくてはいけない。」
「え、Aクラスですか?」
その言葉に、ミレーナはますます驚いた様子で私を見つめた。
「そうだ、優秀なものとばかり付き合っていては視野が狭くなると、あえてCクラスの甘んじていたが…そうも言っていられなくなった。我々を支える優秀な側近、心を許せる高位貴族とのつながりを卒業までの1年で何とかしなくてはいけない。実は父上にも、最近口うるさく言われるのだ。王族のCクラスなど聞いたことがない、御託を並べず本気を出せ…と。」
「そ、そうですの。」
なんだ?ミレーナの顔色が悪い。
「なに、まだ3か月もある。しばらくは学問に集中しよう。我々のクラスが離れないよう、ミレーナ、君もその覚悟を持って頑張ってほしい。卒業後は王太子妃になるのだから。」
「わかりましたわ…。」
ミレーナの声はわずかに震えていたが、大丈夫だろうか?
新たな目標に向けて、これから2人で立ち向かわなければならない。さっそく王宮に戻り、優秀な家庭教師を要請せねば。
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