幕間
第十話
チミドロフィバーズが魔獣を倒したあと、そして折神がばけつに目を付けたあと。
はっきりと断定できないどこかで。
「やはり、おかしいですねェ……」
壁、そして床は白一色。地べたには空の注射器や資料が乱雑に転がっていて、明かりの無く薄暗い特異な空間。
自身の前にホログラムウィンドウを三つも展開し、それらに触れながら男は不思議そうな声を漏らす。
「送った魔獣が、あまりにあっさりと倒されてしまってる……」
肩まで伸びているウェーブがかった髪、切れ長の目と細く黒いフレームの眼鏡、細身かつ高身長。黒のスーツの上から白衣を羽織り、研究者じみたその格好からは理知的な印象を受ける。
「協会の魔法少女でもそう易々と対処出来るわけがない。出現場所の予測など、不可能に近いのですから。初めは偶然近くに魔法少女がいたのだと思っていましたが……」
爪先を噛みつつ、片手で宙に浮かぶホログラムを更に弄り回した。
「山や廃工場など、人の少ないところに魔獣を送っても結果は同じ。人一人すら食す前に倒されてしまっているようですねェ」
言葉の内容から分かる通り、この男こそが今回の事件の首謀者。かつデス花達チミドロフィーバーズの三人が追っている人物だ。
想像と違って、魔獣が簡単に始末され困惑している様子だ。
「魔獣の出現位置を予測でも出来ないと、こうはならないはず。そんな存在がいるはず……」
男はハッとした顔を浮かべて、自身の爪を噛み砕いた。
まさか、そう前置いて呟く。
「彼女達が…………動いて?」
表情は疑念を宿したものから、口角を吊り上げた邪悪な笑みに変わる。
「匂いを今でも探知できるのだとしたら、十分あり得る事です……いずれここを突き止め、乗り込んでくるかもしれません。あァ、楽しみですねェ…………フッヒヒ!」
男は未来を想像し、奇怪な笑い声を上げるのだった。
純粋な悪に染まった笑い声。
「ギャッハ! ギャッハハハハハハ‼」
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