第4話 リリスの誘惑

 ※※※


 酒を飲んでから数時間後…


「でね!?ヒック…あぁ〜、家出する前に言ってやったのよ。魔王だかなんだか知らないけど、私は〜ヒック!、、好き勝手に生きさせてもらうってね。、、、だ•か•ら•おねが〜い。私を殺さないで〜」


 リリスはベロベロに酔っ払いながら泣いて俺の胸に飛び込んできた。


 話を聞くと、リリスは魔王…(リリスにとっては父親)に政略結婚を申し出がされ、リリスは相手が嫌だったらしく魔王に楯突いたところ勘当を言い渡されたらしい。


 いわば今は『元魔王令嬢』と言ったところなのである。


 だから今のリリスは人間なんてどうでもいいらしく、特に殺す理由もないため軽い催眠魔法をかけているだけのようだ。


 この酒場を選んだ理由も「王都の近くならうまい酒が飲めるんじゃないか」そんな軽い理由だったようだ。


 リリスも腐っても魔王の娘。変身魔法のレベルも高く魔族特有の角も隠していたため、俺でさえもリリスのマナを感知しにくくなっていた。それがここまで王都に近づけた理由だ。


 • • •冷静に俺も解説しているが、俺も実は…。


「なんだよ〜、、、お前なんて親から勘当されただけだろ〜?俺なんてパーティ追放、国外追放だぞ!やってられねぇよ」


 ベロベロだった。


 それにリリスとは相性がいいのかどことなく楽しい時間が流れていった。


 リリスから注いでもらって飲んだ酒だったが、いい酒なのだろう。ものすごく美味くてどんどん口に運んでしまう。リリスも拍車をかけるように「もっと飲め」とばかりにどんどん注いでくる。


「何それ?ウケるー!じゃああんたも『元勇者』で私と一緒で独り身なんだぁ…おそろい、おそろい♩」


「そうそう!王のヤローには俺の意志で魔族を倒すって言ったけど、もう萎えちゃってさぁ…」


「ふ〜ん…」


 リリスは何か考えてたことがあるのか悪巧みをしているような不敵な笑みを浮かべる。


「じゃあさ、じゃあさ!私と一緒に来ない!?私とあんたでこの世界を見返してやんのよ!私の力と勇者の力、二つあれば絶対できるって、、、ねっ!?」


 テーブルに手をつきリリスは俺の方に前屈みの体勢を作ってきた。


 ーーやべっ!


 俺は目のやり場に困った。前屈みになっているリリスからは薄いキャミソールのような服を着てるのも相まってか二つの豊満なお山が重力に逆らえず下にブランと下がっているのを直視してしまった。


「あらぁ、元勇者様ぁ…こんなものに興味がおありでぇ?」


 リリスは俺の視線に気づいたようで誘惑するように薄い服の首元を徐々に徐々に焦らすように下にずらしていき、ギリギリお山の全部が見えないくらいのラインでピタッと止めた。


「これ以上はぁ…お•あ•ず•け•よ!私との契約を受けてくれたらもっと先の世界を見せてあげてもいいかなぁ…」


 とろんとした目でリリスは俺の方へと視線を向けてくる。


 こんなことダメなことはわかってる。普段の俺ならば魔族の誘惑なんて一つも聞かなかったことだろう。


 だが王都を追い出した連中見返してやりたいという気持ちは少なからず心の片隅にはある。しかし王の決断もわからなくもない。


 うーん…。


 酔っていた状態ではあったが少しの間考えた。


 • • • • •待てよ。こいつ、リリスは魔王の娘。令嬢なんだよな。リリスの話に乗ってやれば魔王との争いも間接的ではあるが抑え込めるんじゃないか。


 ふと俺はめちゃくちゃ簡単な世界平和への理想論を思いついた。


 どのみち行く宛もない身だ。目の前に上級魔族がいるというのは一つのチャンスなのかもしれない。


 そうと決まれば。


「おっ!いいじゃねぇか。俺とお前で一緒にこの世界を見返してやろうぜ!」


 リリスの話に乗ってやろう。これが世界の平和に繋がってくれればそれでいい。


 それに見返してやりたいという方向は違うがその面においては俺とリリスで意気投合している。


「契約成立ねっ!それじゃあもう明日から活動するわよ。私とあんたで『国』を作るんだから」


 ーーん?、、、『国』?


 何かすごいことを言ったような気がしたが聞き間違えかと思いその場はスルーした。

 

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