第16話 お化けは嫌い!
「さすがに薄暗いなぁ」
俺とリリスはカイルから話のあった洞窟の中へと足を踏み入れていた。
カイルには何かあった時のために外で待機してもらっている。
すぐ戻るとは伝えてあるが何があるかわからないため、一応ではあるが保険をかけておいた。
そして今、俺とリリスは洞窟をしばらく進んだ薄暗い場所まで来ている。
カイルが言ってたように不気味なうめき声のような声が洞窟の内に響いていてとても気味が悪い。
グイッ…
それと問題がもう一つ。
「ね、ね、ね、ねぇ、、、アルス!?ここにはお化けはいない!?、、、大丈夫!?」
ーー• • • • •。
「お前、なんでついてきたんだ?無理なら無理と言えばよかっただろ」
洞窟を入って少ししてからずっと俺の服をグイッと引っ張ってきている。それに離れようものなら力で引き寄せてくる。
なんともめんどくさい状況だ。
「なっ、何を言ってるの!?魔族の頼みだもの、、私が自ら行かないと!」
ウォォォォーーー。
「ひぃぃぃーーーー!」
リリスの悲鳴が洞窟に響く。
「はぁ…。魔族にもお化けみたいな奴はたくさんいるだろ?何がダメなんだ」
「ばっっ、バカじゃないの!?魔族とお化けを一緒にしないで!この大バカ勇者!!」
「あっそ」
俺は服を掴んでる手を振り解きその場にリリスを置いていこうとした。
「ダメダメダメダメダメ!!ごめんなさいぃ〜。私も連れてって〜」
リリスは泣きじゃくりながら俺の体を必死にホールドしてくる。
ーーめんどくせ〜…。
俺はしがみついてきてるリリスを引き剥がした。
「だったらほら」
俺はリリスに右手を差し出した。
「手…繋いでれば近くにいるのがわかるだろ。それで我慢しろ」
「え?、、、うん。• • • • •ありがと」
俺はリリスと手を繋ぎながら洞窟のさらに奥へと向かっていった。
※ ※ ※
しばらく洞窟を歩いていくと、洞窟の最深部と思われるところまでたどり着いた。
最深部と思われる場所は今までの道中と違い、すごく広いエリアになっていて、近くには山から来ているだろう湧水が流れているのが確認できた。
「何もないのか…」
俺は最深部の周囲を見渡すが特に何も見つからない。声の感じ的に大物の何かがいてもおかしくないのだが。
声の方へと向かっていたためここに原因があるはずなのは間違いない。
俺は再度周囲を見回していった。
フワン…フワン…フワン。
「ひぃ!!」
「ん?どうした」
リリスの情けない声がしたためリリスの方に視線を向けた。
「アッ、、、アルス!な、何かいる!?」
「あぁ?…何ってなんだよ」
リリスはビクビクしながら俺の後ろを指指しているのだが、後ろを見ても何も見当たらない。
フワン…フワン…フワン。
「い、い、い、いやぁぁぁーーーー!!」
「うぐっっ!!」
リリスが何を見たかはわからないが悲鳴を上げながら俺に向かって勢いよく抱きついてきた。
「やべっ!」
俺はリリスの勢いを受け止めようとしたが、足場がぬかるんでいたためか足を滑らせてしまいリリスもろとも倒れ込んでしまった。
「いってぇぇ…」
俺は転んだ痛みをこらえながらつぶっていた目を開けた。
ーーあれ。視界が真っ暗だ。
おかしい。意識は完全にある。それに何か顔を柔らかいものが圧迫してるのを感じる。
俺は圧迫感を解こうと顔を左右に動かした。
すると。
「あん!!」
!!!!!!。
俺はものすごく嫌な予感がした。俺の上に乗っかっている柔らかいもの。
それは。
「アルス、、、お願い。もぞもぞしないで」
リリスの綺麗な桃だった。倒れ込んだ勢いで俺はリリスのお尻の下敷きになってしまったようだ。
「ひぃぃぃー!、、、来ないで!来ないでぇ〜〜」
俺の上でリリスは何かと戦っている。声の感じ的にリリスの戦闘意識は皆無だ。どうにかリリスをどかさないと。
「ん〜〜〜〜!ん〜〜〜!ん〜!!」
(早くそこからどけ!邪魔だ!!)
「ひゃん!!」
リリスの色っぽい声が聞こえてくる。ただ今はそれどころではない。
リリスをどうにか!!
そう思っていると。
「ごめん…アルス。• • • • •腰…抜けちゃった…」
リリスがブルブル震えた声で俺に言った。
声を聞く限りリリスはもう恐怖で限界そうにみえる。
ーーしょうがない。やるぞ!!
俺は天に向かって手を上げた。
「ん〜〜、ん〜〜!」
(地龍、天翔!)
俺は重力方向を天側に向け、リリスをマナを使って飛ばした。
するとリリスの体はふわっと浮き上がり、リリスのお尻から解放された俺はすぐさまその場で立ち上がりリリスをお姫様抱っこをする形で受け止めた。
「大丈夫か?」
「うん…」
リリスは受け止められると俺の服をギュッと握ってきた。
「さてと」
俺の前にはフワフワしている火の玉が何個か浮遊していた。
ーー消しとばしてやろうか。
俺はマナを練るため体に力を入れた。
ーーあれ?この気配。
どこかで感じたことのある。それに今までも何度も感じてきたことのある気配。
「まさかな」
まさかとは思った。
だが俺の読みが正しければ今ここに『リリス』がいるというのは最強の武器になるかもしれない。
俺はその可能性にかけてみようと思った。
「おい!ここにいるのはお前たちの姫様だぞ!このまま俺たちを攻撃してくるのか!?」
俺はリリスを人質にしたかのように火の玉たちに声をかけた。
その時だった。
「えっっっ!?姫様なの!?」
洞窟のどこからともなく小さい少年のような声が聞こえてきた。
俺はこの声を知っている。何度も俺たち勇者パーティを苦しめてきた魔族。
目の前を浮遊していた火の玉は一つに集まりだし、一人の少年が姿を現した。
「本当だーー。姫様だぁ」
そこには久しぶりに会う魔王軍幹部の姿があった。
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