第17話 魔王軍幹部『ネロ』
〜リリスの執務室〜
俺とリリスは洞窟騒動の原因を解決した後、その諸悪の根源をリリスの執務室まで連れ帰って来ていた。
「もー。洞窟にいるなら言ってくれないと、僕だって警戒しちゃうでしょ〜」
魔族の少年は執務室の席に座っているリリスに言った。
少年はとても幼い姿をしており、身長もルルとララより少し大きいくらい。金の髪に小さな二つのツノがあるのが特徴的だ。
おまけにリリスに盛大なゲンコツを受けたため頭には大きなたんこぶができている。
「警戒?じゃあ。聞くけど『ネロ』あなたはこんな人間なんて来ないような場所で何をしていたの?あなたの行動はパパの命に反してると思うのだけど」
リリスは強い圧をかけながらネロに問いかけていく。
リリスも普段はふざけてるように見えるが契約関連に関してはとても手厳しいところがある。
「それが違うんだなぁ…姫様!僕はあの地に眠る鉱石を守ってたんだよ!あの洞窟にはいい鉱石がたくさんあるからね。あとで魔王様に差し出すために誰も来ないよう見張ってたんだ」
ネロは「ちっちっち」と人差し指を動かす動作をしながらリリスの問いに答えた。
だが俺はネロの言い方から察したことがある。
それは。
ーー• • •おまえも結局居心地が良くなっただけじゃねぇか。
そもそも鉱石だけ取るのなら他の魔族の協力でも得ればいい。それに幹部クラスがわざわざこんな人も来なそうな場所で見張る理由なんてないだろう。
この町に来る魔族たちといい、けっこうな数の魔族が魔界を決別してこの町に移住してくる。
魔界とは一体どんな場所なんだ?心底気になってくる。
ネロは話を続けていく。
「それに、そこにいるのは勇者アルスじゃないか。どうしたの姫様。これは契約違反じゃないの?」
「、、、!!」
ネロの言葉にリリスはビクッと反応した。
「私はいいの!!家を追い出された身だし!、、それに• • • • •彼は…私のカレシだから…」
ーーなんで妙に恥ずかしがってるんだ。こいつ。
リリスは座ったままではあったが指先同士を合わせもじもじとしながらネロに言った。
そんな恥じらわれると俺まで恥ずかしくなってきてしまいそうだ。
それを聞いたネロはお腹を抱えながら足をバタバタさせ笑った。
「あはははは!!、、勇者が姫様の彼氏!?、、姫様も大胆なことするねぇ。前代未聞だよ!!うんうん。なんかいいね!おもしろそう!ねぇ!?僕もこの町の仲間にしてよ?魔界にいるより全然楽しそう」
「えぇ?でもネロあなたは魔王軍の幹部でしょ?それにこの町に入るには魔界との決別と私への服従が条件よ。呑めるの?」
「あたりまえでしょ!?今まで魔王様に仕えていたのが姫様に変わるだけだもん」
ネロはあっさりと主人をリリスに移すと言ってきた。
あっさりと裏切られる魔王には同情の念を送りたくなってしまう。
リリスは少しの間ネロの処遇について考えていたが、「はぁ」とため息を吐き口を開いた。
「わかったわ。あなたの移住を認めます。ですが私との契約。破ることがあればタダではおきません。いいですね?」
リリスはそう言うとネロは「うん!」と元気よく答えリリスの執務室を勢いよく開けて外へと駆け出していった。
「いいのか?リリス。あいつは幹部だろ。引っこ抜いたら魔王にバレるんじゃないのか?」
「どちらにせよよ。どのみちダメだと言ったら魔界であーだこーだ言うでしょ?だったらネロには戦力としていてもらった方がいいと思うの」
「確かにそうか…」
まだまだ一つの町ができかけてきただけであって国作りとしてはまだまだの状態だ。ネロを魔界に戻さないでおけば少なからず国作りの時間が稼げるかもしれない。
リリスもしっかりと考えてるみたいだ。
「そ•れ•にぃ〜、いざとなったら私を助けてくれるんでしょ〜?勇者様だもんね!?」
「『元』な」
「ふふふっ!!」
こうして新たに魔王軍幹部ネロを迎えることになった。
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