第15話 町の南にある洞窟
「それでは…姫様。始めてもよろしいでしょうか?」
カイルは低姿勢でリリスに声をかけた。
「えぇ、いいわ。私のカ•レ•シ•が迷惑かけたわね。いつでも言ってちょうだい」
リリスは言葉に強弱をつけてカイル相手にもカップルアピールを始めた。
ーーこいつ、どこででもアピールしやがって…
最近町を歩いていても「あれが姫様の彼氏さんよ」といたるところで言われるようになってきた。
一体どんな感じで町を回っているのか見てみたいものだ。
「あぁー、、、それはそれは、存じ上げておりますよ。姫様!町中ではこの町の『ベストカップル』だって有名な話です!」
「えっっ!!、、、そうなのっ!?アルスアルス!!私達ベストカップルなんですって!!、、きゃーーー」
リリスは頬を抑えながら顔を赤らめていた。
「ねぇ!カイル!?私達のこともう一回いって!?」
「はい!いくらでも。ベストカップルだと!」
「やーーーん!」
ーーもうこのバカ共をどうにかしてくれ…
俺は机の上で頭を抱えた。
そんなコントじみたことをしているとルルから横槍が入った。
「姫様。今日はこの後やってもらいたいスケジュールがあります。お早めに要件をお願いします」
「あ…」
ーーあ。じゃねぇよ脳内ピンク女。
リリスは冷静さを取り戻すと、コホンと騙すような咳払いをして座るカイルに視線を向けた。
※ ※ ※
「それではカイル、どうぞ。」
「はい。これは…私がこの町に住むことが決まって建築作業をしていた時のことです。仲間たちと物資の調達に町の南にある森に木を切りに行ったのですが、とある洞窟がありまして…」
ーー洞窟?
リリスと二人でよく町の中は見て回ったりはしていたが、あまり町の外までは出掛けたことがなかった。
洞窟なんてあるんだ。
勇者の時のちょっとした冒険心が俺の中で騒ぐのを感じた。
「木を切りにいく度にその洞窟の前を通るのですが、いつも何かのうめき声か叫び声のような声が聞こえてくるんです。
もうそれが怖くて怖くて。みんなお化けの仕業なんじゃないかって言ってまして」
• • • • •。
ーー充分お前もお化けなんだけどな。
ぜひ人様に問うてほしいものだ。私もお化けに見えますかと…。
「そこで姫様方にお願いがあるんです。どうかあの洞窟の謎を解いて欲しいのです。でないとみんな怖くて南にある資源を取りに行けなくて…」
ーーなるほどねぇ…。
南に洞窟があるというのは初耳だったが、資源を取りに行けないとなるのはおおごとだ。
確か南には建築に使うための『石』や武器などを作るための『鉱石』がよく取れると聞いている。
これから町を超え国を作るとなれば必要不可欠な資源だ。この問題はこれからの生活に大きく関わってくる。早急に解決した方がいいだろう。
それに少し洞窟の存在にも興味がある。
とりあえずルルの話だとリリスは別件の関係で行けなそうだ。ここは俺が一人楽しく洞窟の様子を見に行くことにしよう。
そう思った俺はカイルに一つ返事で答えた。
「わかりま…」
「わかったわ!!今すぐその洞窟を調査します。私とこのアルスでね!」
俺の話を遮るようにリリスが洞窟捜査の宣言をした。
ーーは?、、、お前ルルの話忘れたのか?
俺はそう思いルルの方へ視線を向けると、ルルも心なしか怒ってるようにも見えた。
「本当ですか?姫様ありがとうございます。では私が洞窟の場所まで案内いたします」
「えぇ。よろしく頼むわ!行くわよ、、、アルス!」
「姫様!お待ちください!スケジュールだとこの後!」
必死にルルがリリスを止めに入るが、こんなことで止まるリリスじゃない。
リリスはルルの言葉を無視して、カイルと共に外に向かって歩いていった。
「アルス様…わかってらっしゃいますよね」
ルルの今まで見たことのないほどの目の圧が俺に襲いかかってきた。
「はい…早急に調査してあのバカを連れて帰ってきます」
ーー洞窟調査楽しそうだったんだけどなぁ…
俺は先を行くリリスとカイルを追っていった。
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