第14話 成長してきた町と魔族『デュラハン』

「うーーーん!!、、、ふぅ。お仕事終わり!」


 とある一室。リリスが両腕を上にあげ座ったまま背伸びをしていた。


「ごくろうさま。リリス」


「うん!」


 国作りを始めてからしばらくの期間が流れた。


 魔法『地殻吸引』によって更地になった広大なエリアには木や石、レンガなどでできたさまざまな建築物が建ち並ぶようになっていた。


 今では俺とリリスたちが住む家も木の家からレンガ調の大きな建物へと変わっている。


 今日はそこの一室でちょっとしたお仕事をしていたということだ。


 それに驚いたことなのだが、建築を始めてから日に日に魔族の人口が増えてきていた。


 話を聞くと、人界にいた野良の魔族も魔界から来たものも揃って「姫様がいるから」という理由だけで来ているものが多かった。


 支持するものが多いとは聞いていたが、現実的に見せつけられてしまうと魔界でのリリスの人気が高いというのもまんざら嘘でもないようだ。


 最近の話だが移住してくる魔族が増えすぎてきたため、一人一人の『名前』を書いて提出してもらっている。


 本来魔族は選ばれた者にしか名前が与えられないらしいが、魔界と違って人界ではさすがに名前がないと不便になるケースがたくさんある。


 そこでリリスが出した契約内容として『魔界との決別』『リリスへの服従』


 その条件を呑める者にリリスが名前を与えこの町に住むことを許されるということにした。


 リリスもこの時ばかりは部屋に閉じこもって真剣に魔族たちの名前などをちゃんと考えていた。


 それだけしてリリスが考えたことでもあるし特に悪いことではなかったため、とりあえずリリスに居住と名前の件は任せることにした。


 そして今。


 俺とリリスは提出された書類の確認が終わったところだ。


 書類とはいっても『どこに住んでるなになにです』という簡易的なものだ。


 最初こそ山のような紙の量だったが、やっと落ち着いてきたように感じる。


 リリスは全員の顔と名前を覚えたと言うが、俺はまだ顔と名前が一致しないところがある。とりあえずは徐々に生活していくうちに覚えていこうとは思う。





※ ※ ※


 コンコン。


 二人で書類を確認を終え二人で休憩をしていた最中、ドアの向こう側からノックする音が聞こえてきた。


「いいわよー。入ってー」


 リリスがドアの外に返事を返すとドアがガチャっと開き、外からルルが部屋の中へと一礼をして入ってきた。


「失礼します。姫様、アルス様。魔族の『デュラハン』様がお越しになられました」


 ーーデュラハン?確かさっき書類の確認で見たな。


 俺は書類を手に持ちパラパラっと目を通し直した。


 ーーあっ、いたいた。これだ。


 種族『デュラハン』

 名前『カイル』

 住所『町の南端』


 勇者の旅で何回かデュラハンの一族とは戦ったことはあるがこの町に来たデュラハンは初めてだ。


 戦いの最中だったということもあり詳しくデュラハンを見たことがなかったため少しだけ楽しみではあった。


「こんにちは。姫様、アルス様。私はデュラハン族の『カイル』と申します。以後お見知りおきを」


 ガシャ、ガシャと銀の鎧の音をたてながら両手に首を持ったカイルは俺とリリスが座る席に深く一礼した。


 ーーおぉ〜。ほんとに首がねぇ〜〜。


 デュラハンだから当たり前の話だ。当たり前ではあるのだがまじまじと目の前で見るとなんだか初めて見るような感覚になり新鮮味が出てきてしまう。


「それで、今日はどうしたの?カイル。私に直接来るなんて何か悩みでもあるのかしら?」


 リリスは椅子から立つと絶対俺には見せないような優しい表情でカイルへと声をかけた。


 絶対俺には見せないような顔。


 ーー営業スマイルもはなはだしいな。


 きっとリリスへの用事だろうと思い、俺は邪魔にならないようにと部屋を出ようとした。


 すると。


 カイルと話すはずのリリスがなぜか俺の方に歩いてくる。


 俺は「なんだ?」と思いリリスに目を向けると。


 ぐにゅっ!!


「いでっっっ!!」


 部屋を出ようとした俺の足をリリスはヒールで力強く踏みつけてきた。


「どうかしましたか?アルス様!!、、」


「いや、、、なんでもない」


 心配してくるカイルに「大丈夫」と手でアピールした。


 ーーこいつぅぅぅ〜〜…。


 リリスは未だに営業スマイルをしている。


 だが俺にはわかる。この笑顔には『はぁ?お前何勝手に出てこうとしたんだ。ふざけてんじゃねぇ…』という言葉が隠されているということを。


「はぁ…」


 俺はため息を吐いて、もう一度席に着きカイルの話を聞くことにした。


 

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