第26話 リリアル王国
俺とリリスの婚約が公になってから少しの時が流れた。ホープ島に昔の面影はもうなく、島のさまざまな場所に町ができ、国と言われてもおかしくないくらいの成長を遂げていた。
ヴァルキオン王の計らいによりホープ島には大きな橋がかけられ大陸からの移動も可能となり今ではいろんな商材などが頻繁に流れ込んで来ている。
それに驚いたことだが時が流れるにつれて人界側が魔族たちに寄り添ってきてくれていた。
もっと歴史を重ねていかなければ寄り添えないかと思われていたが、ヴァルキオン王やヴァン爺たちが頑張ってくれたのだろう。
今ではこのホープ島に住む人間も増えて来ており、昔の人間からしたら考えられないだろうが、人と魔族が仲良く会話をしている光景が伺える。
『仲の良い光景』
聞こえこそいいがもちろん町が大きくなり人と魔族が関わり出せば、仕事がたくさん増えてくる。
あたりまえのことではある。
今までは俺とリリスでなんとかやってこれたが、今ではリリスもあっち行ったりこっち行ったりと常に忙しそうにしている。
そこでホープ島ではリリスの負担を和らげるためにと、人と魔族からなる兵団『ホープ騎士団』が創設された。
騎士団の目的はおもにホープ島全体の治安の維持だ。今までリリスが指揮してどうにかしていたものをリリスの代理として治安を守る。
そんなところである。
最初こそボロボロの組織だったが、時々来てくれる、ヴァン爺、ヘルガー、レイナにより組織力は格段に上がった。
リリスも今では騎士団を頼りにしている。
そして国作りが順調に進んでいるところであったが…。
「う〜ん…」
俺やリリス騎士団の幹部たちは悩んでいた。
時はほんの少し前。俺とリリスのところに一通のヴァルキオンからの手紙が届いた。
その中には。
『ホープ島 建国にあたり』
とタイトルが書いてあり、ヴァルキオン王からの頼みだったり他国との関係性。さまざまなものが書いてあった。
ただその問題は直に解決していくだろう。
問題はそこじゃない。
問題は。
「なんて名前の国がいいんだろう?」
これだ。
今まで『この島』『ホープ島』としか呼ばれてこなかったが、手紙の内容的にとうとうこの島を国として建国することを認めてもらえたみたいだ。
だったらいい名前を付けようじゃないか。
と今みんなで会議をしている最中なのだ。
「みなさん思いつきましたぞ!『リリス帝国』なんてどうでしょう?皆も納得されるかと」
「却下よ。どうして私の名前が全世界に広まるしかないのよ。恥ずかしい」
「そうですか…トホホ…」
幹部にまでなったデュラハン族のカイルの案はリリスの一言に粉砕される。
「それならこれはどう!?『鬼のリリス様王国』」
ネロは頭に指でツノを作り、からかうようにリリスに言う。
「ぶっ飛ばすわよ!ネロ。そんな名前いいわけないでしょ!」
もちろん却下された。
こんな状態がしばらく続いている状態だ。
ーー何か一つピンとくる名前があればいいのだが…。
しばらく悩んでいるとリリスの後ろで待機していたルルが口を開いた。
「リリアル王国…」
「リリアル王国?…ルルその名前に何か意味はあるのかしら?」
リリスはルルに問いかけた。
すると。
「姫様とアルス様がラブラブする国なので…」
ルルは顔色一つ変えず冷静に答えた。
ーーは?
いやいやいや。この小娘は今なんて?俺とリリスがラブラブする!?何を言ってるんだ。そんな案が通れば今まで会議は続いてない。
俺は小馬鹿にするような感じでみんなの反応を待っていた。
だが。
「私とアルスがラブラブ……。いいわね。それはアリね」
ーーおい、この脳内お花畑。そんな名前に呑まれてんじゃねえよ。
俺はみんなの反応を見るため周囲を見た。
「いい名前ですな!姫様がそれで良ければ私に異論はありません!」
「僕もないよー」
ーーえ?みんな反対しないの…。
カイルやネロ以外の幹部たちもルルの意見に賛成が多かった。
「嘘だろ…」
ついボソッと本音が漏れてしまった。
「コホン!みなさんお静かに。この国の名前が今決まりました。この国の名前は!」
『リリアル王国』
「です。これから大変になるでしょうが、このリリアル王国のために皆尽力してほしい。これにてこの場は解散とします!」
「• • • • •ほんとに決まっちゃうんだ」
こうしてこの国は俺とリリスがラブラブすると意味を込められた名前『リリアル王国』と決まってしまうのだった。
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