第24話 まさかの急展開!!
「よくぞ参られた。リリス殿。私がこのヴァルキオン国王、ユグドラシル•ヴァルキオンだ。そなたに会えることを楽しみにしていた」
国王は座っていた装飾された立派な椅子から立ち上がりリリスへと挨拶をした。
「はい。私もヴァルキオンの国王様に謁見できるなんて嬉しく思います。魔王の娘リリスでございます。今は勘当された身ではございますが、以後お見知りおきを」
リリスは着てきた黒いドレスのスカートをそっと持ち上げ国王へと挨拶を返す。
「なに?あの乳牛!ぶってんじゃないわよ!」
「うるさい…」
「いたっ!!」
俺は隣でぶつぶつ文句を言うレイナに一発ゲンコツをお見舞した。
初めて見るリリスのかしこまった挨拶だ。
魔界がどうなのかはわからないが、もしかしたら令嬢ということもあり、こういう公の場は慣れているのかもしれない。
国王は話を続けていく。
「そなたに来てもらったのは他でもない。この世界のこれから。おもには魔族との関係の話だ。そなたにはどう伝わっているかはわからぬがこの世界はずっと昔から魔族と戦ってきた歴史を歩んできている。それは今もなお続いている状況だ」
「えぇ。私も存じあげております。魔界でもずっと『人は倒すべき敵』と教わって参りました。その情報は間違っていないかと」
粛々と話が続く。普段はふざけたような性格をしているリリスだがこの場では国王の問いにしっかりとした態度で返している。
「ふむ。認識が同じようなら話が早い。リリス殿。単刀直入に言おう。私はこの世界の真の平和を望んでいる。今までは人と魔族、互いに戦うことでこの世界の歴史を刻んで来た。だが先人たちには申し訳ないがこんな世界のどこに平和なんてあるだろう?事あるごとに魔族たちと戦い、ほとぼりが冷めれば一時の平和が訪れる…こんな平和とは平和とは呼ばん。私はそう考えている」
国王は長々と自論を述べていく。俺も昔から何度も聞かされてきたことだ。戦うことで得られる平和はもちろんあるのだろうが、戦いはまた新たな戦いを生む。俺もそれは身をもって体感してきた。
「国王様らしい良いお考えですね。確かにこのままいけば今は平和でもいずれ更なる戦いが待ち受けることになるでしょう。それで• • •私にどうしろと…お父様に戦いをやめるよう説得しろとでも?」
リリスは鋭い視線を国王に向ける。
「はっ、はっ、はっ。そう身構えんでくれ。そうは言わんよ。そなたは勘当されている身なのだろう。そなたにもそなたの都合があるとみた。そなたに頼みたいことはたった一つだけだ」
『アルスをもらってはくれないだろうか?』
ーーうんうん。アルスを• • • • •って、、、
「はぁーーー!?」
謁見の間で俺は盛大に叫んでしまった。
ーーまてまてまてまて、、、さっきまであなたそれっぽい雰囲気でリリスに長々と自論を言ってたじゃないか?どうしてそれが…。
「アルスよ。聞き分けを持ってくれ。これが一番の平和への近道なのだ。人間と魔族。そこに繋がりさえ生まれれば世界は間違いなく今までとは違う道を歩む。それにメルガヴァンの話だととてもリリス殿と親密な関係らしいじゃないか。なお魔王の令嬢ともなれば、魔王と接触するチャンスも生まれてくるはずだ。頼む。これは王からの頼みだ」
ーー頼みだと言われても〜〜〜。
確かにリリスとは付き合っているという関係だが『もらう』=『結婚』ということなのだろうが…話が飛躍しすぎてはないだろうか!
「王様!!、、、なんでそんな乳牛相手にアルスを!?アルスは、、むぐっっ、、、…」
「英断ですのじゃ。王よ。この先の未来のためにアルスよ。おぬしも決断の時じゃ」
ヴァン爺はレイナの口を魔法で抑えながら俺に言う。
「決断?、、おいヘルガー、お前からは何かないのか!?」
「私か?私は王の判断に従うのみだ」
ーーお前に聞いた俺が悪かった。
「そういうことだアルス。皆も賛成してくれている。あとはリリス殿次第なところなのだが…」
国王はリリスへと視線を向けた。
すると。
「えぇ。王様。私もこの世界の平和のためにその話お受けいたしましょう」
リリスは涼しい顔をして国王に答えた。
ーーお前も何真剣な顔してノリノリで答えてるんだ。バカ令嬢…。
「そうか、そうか!この話を受けてくれるか!!感謝するぞリリス殿。そうだな…私からのお祝いだ。これからのホープ島での活動をヴァルキオン王国は全力で支援することにしよう。これから長い歴史がかかるだろうが共に人と魔族、共生できるように尽力していこう」
「えぇ。王様…もちろんです」
ヴァルキオン王と元魔王令嬢リリスは熱い握手を交わした。
「これにてこの話は閉幕とする」
王の宣言と共にヴァルキオン王とリリスの謁見は『成功?』に終わった。
もちろんだが俺の意見は何一つ聞いてはもらえなかった。
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