第6話 カップルがいい!!

「それでこれからどうするんだ?見返すって言ったって、相手はお前の父親なんだろ?魔王討伐は俺も目標でやってきたがさすがに二人ではきついぞ」


「だから言ったでしょ!私たちの『国』を作るの!魔族もそうだし、あんたもいる。元勇者なら強い奴の一人や二人連れてこれるでしょ」


 リリスはマナを使い黒いドレスに身を包むと腰に手を当てながら堂々とした態度で俺に言ってきた。


 やっぱり俺の聞き間違いじゃなかったみたいだ。


 リリスは本気で国を作ろうとしている。


 単純に魔王や王国より強い国を作ってこの世界を支配しようとしているのか。


 なんとも魔王の娘らしい考え方だ。


 しかしもちろんのことだが、これを実現するには問題ごとがたくさん出てくる。


 リリスも戦いに関してはバカではないらしく魔族だけを集めようとはしていなさそうだ。だがさすがに「魔族と協力してくれませんか」と言ってついてきてくれる人間なんているのだろうか。


 他国とのやり取りは• • •リリスに限ってそこまでは考えていないだろう。ただただ力で支配しようとしているだけだ。


 このままだと二極の戦いどころか三極になり、たちの悪い戦争になる。


 さすがの俺も魔族を倒そうとする軍と魔王軍に挟まれて戦うのは嫌な気しかしない。


 こればかりは阻止しなければいけない。


 ーーどうにかリリスの考えを誘導しないとな。


「あの、旦那様。こちらにサインを?」


「ん?あぁ、サインね。ちょっと待っててな」


 ーー• • • • •あれ?


 今までに聞いたことがない声がした。俺の目の前に調子良く鼻唄を歌っているリリスが一人。他には誰もいないはずだ。


 一体誰だ。俺は声のした後ろを振り向くとそこには一枚の紙とペンを差し出している二人の銀髪の少女が俺のすぐそばに立っていた。


「うわぁぁぁっっ!!、、、いつからそこにっっ!?」


「旦那様が怖い顔をして悩んでいる時くらいからです」


 全然気配を感じなかった。殺意が全くないからか。


「あっ!『ルル』、『ララ』来てくれたのね?」


 リリスは知り合いなのか二人が来たことに気づきこちらに向かってきた。


「知り合いか?」


「そうよ!私専属の双子のメイドなの。容姿はほとんど一緒なんだけど…こっちのピンクの目をしてるのが姉の『ルル』それでこっちのブルーの目をしてるのが妹の『ララ』これから私たちのサポートをしてくれるの!」


 リリスは右に左に移動しながら一人一人紹介してくれた。


 本当に目の色ぐらいしか判断基準がないのが驚きだ。


 お互い身長も140あるかないかくらいの大きさに髪の長さも二人とも一緒で肩くらいまでの髪をツーサイドアップにしてる感じだ。


 強いて言うなら少しばかり姉の方が胸が大きいか。


「旦那様、これにサインを。」


 さっきも言われたな。それに旦那様ってなんなんだ。俺は目の色からしておそらくルルの方から紙を受けとり目を通した。



【婚姻届】

 

 アルス•フランベルジュ殿   

 リリス殿          

 

 ーー• • • • •は?


 何がなんだかわからなかった。なんで俺がリリスと結婚することになってるんだ?


 俺はジロっとリリスの方を見た。


 するとリリスはまんざらでもない感じで頬に手をやりもじもじと体をくねらせていた。


 ーー犯人はこいつか。


「おいリリス。これはどういうことだ?」


 リリスに婚姻届と書かれた紙を見せつけた。


「ど〜ってぇ…国を作るには王と王妃が必要でしょ。だから王はアルスに譲るから私を王妃に…」


 人差し指をツンツンとさせながら恥ずかしそうにこちらをチラチラと見てくる。それに呼び方もアルス呼びに変わっている。


「ダメに決まってるだろ。俺とお前じゃ立場も違うんだ。それにお互いのことを戦いくらいでしか知らないじゃないか」


 リリスは俺の返事にしゅんとした顔をして落ち込んでしまった。


「それならカップルなんてものはどうでしょう?結婚はそれからでも遅くはないかと」


 今度はララの方が俺とリリスの話の間に入ってきた。


 ーーなんで結婚前提で話が進んでるんだ。


「カップル…」


 リリスはカップルと聞いた途端顔を真っ赤にした。


「カップルだってダメに決まってるだろう。なんで親に目にもの見せるだけなのに結婚だのカップルだのの話になってるんだ」


「カップルがいい…」


 ーーえ?


 リリスがボソッと何か喋ったような気がした。


「カップルじゃなきゃやだ• • • • •カップルがやりたい!お願いカップルをやらせて!、、、じゃなきゃここで暴れる!!」


 ーーはぁぁあ?


 なんでこいつは結婚の時より本気になってるんだ。

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