第22話 ヴァルキオン訪問
〜王都ヴァルキオン〜
ヴァルキオン王からの招待を受け、俺とリリスは王都ヴァルキオンへ来ていた。
ホープ島にはたくさんの魔族を残してきてしまってはいるが、ネロのような元魔王軍幹部や腕のたつ魔族もちらほらいる。
まぁどうにかなるだろう。
それにしても……
「久しぶりだなぁぁーー!」
俺は今久しぶりに王都に足を踏み入れていた。追放されていた身ではあったが、もともと魔族から王都を守るために追放されていたため王都に魔族を招待した時点で、ヴァルキオン王が俺の国外追放を解除してくれた。
町の沿道には事前に話がされていたのかたくさんの国民たちが集まってきていらようだった。
沿道からは「勇者さまぁぁー!」と声をかけてくれる者や手を振ってくれている国民もいる。
ほんとにありがたいことだ。
俺はそんな手を振ってくれる国民たちにぺこぺこ挨拶しつつ手をふり返していった。
だが。
ざわざわざわざわ……
ーーそううまくはいかないよな…。
周囲のざわつきの視線の先。そこには俺の後ろを歩くリリスの姿があった。
当然と言えば当然だろう。今まで世界の敵として見てきた魔族が王都にいる。純粋に『ようこそ』なんていう方がおかしいというものだ。
俺も事前にリリスには「ひどいことを言われるかもしれない」と伝えてはあった。
だがそれでもリリスは俺に行くと言ってきた。
今はおそらく『勇者様と一緒にいるから』とある程度の誹謗中傷くらいで済んでくれているのだろうが。
ーーさすがにあまりいい気分はしないな。
「大丈夫かリリス?」
「あぁ……もちろんだ…王都に魔族がいるんだ…当然だろう?」
リリスは軽く笑みを浮かべ俺に答えた。
リリスの顔は『大丈夫』と強がっているようだったが、言葉からは多少なりとも辛さを感じる。
ーー早々と城へと向かった方がいいか…。
俺は歩いてる速度を多少早め、リリスを早々と国民たちの目から逃れさせようとした。
その時だった。
「何しょぼくれてんのよ!乳牛女!人間様の住処に来てるんだからあーだこーだ言われるのは当然でしょ!?」
声の先。道の真ん中に腰に手を当て仁王立ちしてる青い髪の少女がいた。
「レイナ!!、、、来てくれたのか!?」
「おっす!ア〜ルス!」
レイナは可愛く敬礼ポーズで出迎えてくれた。
「それと…」
レイナは俺の後ろに立つリリスを見た。
「あら〜。惨めねぇ…姫様ぁ?…自慢のお胸もしぼんでるんじゃない?」
レイナは挑発するような態度でリリスに言葉をかけた。
「なっっ!?あなたにだけは言われたくない!!」
「おっ。食いつくねぇ!乳牛さん♩」
ーーこいつ容赦ねぇな…
俺はリリスを煽りながら楽しんでいるレイナを見てそう思った。
「これ。そのくらいにせんかレイナ。リリス殿は我が主の客人だぞ」
レイナの後ろから聞き覚えのある渋さを感じる男性の声が聞こえてきた。
レイナの後ろに目をやると、後ろには180を超えるであろうガタイのいい黒髪の男がこちらに向かって歩いてきていた。
「ヘルガー!!、、、久しいな!!」
「あぁ。お前こそ元気にしてたか?」
ホープ島には来ていなかったためヘルガーに会うのは本当に久しぶりだ。
「それで、アルス。そのお前の後ろにいるのが魔族の…」
「あぁそうだ。彼女が魔王の娘!、、魔王令嬢リリス様だ!」
俺はドンっとヘルガーに見せびらかすようにリリスのことを紹介した。
「なっ!!バカアルス!そういうのは私自ら!!」
リリスは少し顔を赤くしながら怒り口調で俺に言ってきた。
「ほぅ。令嬢とはな。それは初耳だ。……失礼、リリス殿。私は元々この勇者アルスと魔族を倒すためパーティを組んでいたヘルガー•ローマンというものだ。よろしく頼む」
ヘルガーは魔族であるリリスに右手を何気なしに出した。
「えっ!?、、、あの。、、その。、、よろ、、、しく…」
リリスもすんなり握手を求められるとは思わなかったのか困惑しながらも手を差し出し握手を交わした。
「ヘルガーはそこにいるレイナと違ってちゃんとしてる。魔族のお前にも平等に接してくれるはずだ」
「ぶっ飛ばすわよ。アルス…」
レイナは俺に向かい杖を構えてきた。
「あぁーー、、こわい、こわい」
俺は杖を構えすぐにでも魔法を撃ってきそうなレイナに両手を上げ降参ポーズをした。
「はっはっは。こういうやりとりも久しいな。• • •それでは本題に移ろうか?、、、リリス殿。お城にてヴァルキオン王がお待ちしている。共に来てもらってもいいかな?」
ヘルガーはリリスにそう告げるとリリスもコクリとヘルガーの話に頷き、俺も含め四人はヴァルキオン王のいる城へと歩いて向かっていった。
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