11.ビックサム、ビッグダディになる(大嘘)

「ちょっと……本当に乱馬さんは、自分の立場を理解してください……」


「いや、俺もイケメンだが人間だ。教室で弁当ぐらい食べていいだろう」


「それがだめなんですよ! 乱馬さんが、教室でお弁当を食べると、学校中から、人が集まって、教室前の廊下が押しくらまんじゅう状態になるんですから……」


 昼休み、俺が教室で弁当を食べると不思議と廊下に人海が生成される。イケメンすぎる俺が悪いのだが、俺の食生活に問題は起きないのだが、なぜか庵に教会に連れてこられた。


「いや俺は悪くないぞ。今からでも教室で青春を……」


「本当にやめてください。草薙先生にクレームが行ったんですよ。まして明日からは、ゴールデンウィークで、乱馬成分を補給できない生徒たちでゴア返し掛っていたんですから」


「ああ、俺は何と罪な男」


「本当にそのまま、公然わいせつの罪で捕まってほしいです」


誤解が解け、冷たい視線がよりいっそ強くなった庵であったがその照れ隠しもまた最高だ。


「まあ、俺とご飯が食べたいならそう言えツンデレめ」


「いい加減怒りますよ」


うん、平常運転。そんなことを言いながら、俺たちは弁当を開こうとするのだが、その瞬間教会の扉が開かれる。


「んだよ……先客がい……へ、変態!」


「おい、リリアン、俺は変態ではないぞ。芸術だ」


「う、うう……うるせえ……この……あう……」


なんだ? リリアンの様子がどうにもおかしい。助けを求めるが、庵はため息を吐く。


「いや、この前の事件で乱馬さんがやらかしたからですよ」


「うーむ、確かにビックサムの暴発は、予想外であったが、おかげで壁にビックサムをこすりつけると暴発してしまうようだ。やはり、年齢が上がるにつれ、クモ男式壁渡には、速度に制限を設けなくては……」


「ちい……」


俺は、真剣にクモ男式壁渡の今後について考えていると、つかつかとリリアンは、俺によって来ると弁当を差し出してきた。


「ん!」


「なんだよ」


「だから、ん!」


「カンタ、それじゃわからないでしょう」


俺に弁当を押し付けるリリアン。いや、まさかガン〇されてホレたか。


「ああ、だからあんな勢いよく風呂に出されたらその……たぶん私、妊娠……しちゃったかもしれないだろう……まだ、経験がないのに妊娠なんてしたら……もう結婚するしかないじゃないか……だからさ! その弁当はやる! お嫁さんって言うのは、旦那様にお弁当をあげるものなんだろう! 少女漫画で呼んだ!」


ポカンとする俺と庵。いや待って嘘だろう。この子、馬鹿なのか。


「えっと、ですね。リリアンさん、良いですか?」


「んだよ、寝取りのぱっちゃん。私の旦那はやらねえぞ」


「寝取りません。というか、リリアンさん。精子は、真水に浸かるとすぐ死ぬ弱い細胞なんですよ。妊娠は、直接子宮に精子が入り込んだ場合のみです」


「はへ……でも、故郷の母ちゃんには、キスすると妊娠するから、キスはするなって言われたぞ。今回は、その顔にかけられて、……え、まって……じゃあ私、処女妊娠は」


「しません」


「よ、よかった……」


リリアンは、ほっとするときっと俺を睨み、俺に無理やり手渡した弁当を奪い取る。


「あ、おい!」


「うるせえ、変態! 私の弁当だ返せ!」


いや、良いよ別にいいんだけどさ、なんというか弁当をカツアゲされたようで悲しい。


「あぁ……リリアンさん……かわ……」


「ん?」


「ああ、リリアンさんは、カワイソーですね。そ、その私たちとお弁当食べませんか?」


一瞬、庵が悦に浸った顔になった気がするが気のせいだと信じたい。

嫌だぞ、好きな女がまさかの女性に取られるなんて。


「お、いいぜ。それにこれを機に変態とも、ちゃんと話しておかねえと、負けっぱなしでなんだか悔しいしな」


うーん、なんと切り替えが早いんだリリアン。

まあ、別に仲が悪いままでもなんだか嫌だしな、ニンフ寮の奴らとなら別に気兼ねなく飯が食えるし。


「悔しいって……別に戦ってはないだろうに」


「いやそうだけどさ。なあ、変態、お前、私のこと好きだろう。実は、ぱっちゃんを好きと言いつつ、私の浴室に侵入射精までするんだからな」


「は、ふーん、へーそうなんですね。乱馬さん」


コイツとんでもない爆弾を投下しやがった。人の恋心を邪魔しやがって。

庵もなぜか俺をゴミで見るように見てくるし。


「いや、まて俺は何度も言っているが、庵が好きなんだ。連絡先も貰っていないが……そうだ庵! 連絡先をこ……」


「生理的に無理です」


く、流れで連絡先を貰おうとしたのだが……無理か。

そんなことを思っていると、俺のスマフォ画面に映るQR画面をリリアンは、勝手に読み込み連絡先を登録し、自慢げに俺を見る。


「ふふん、残念だったな。ニンフ寮で変態と連絡先を交換した最初の奴は、私だぜ」


「いや、この前、良二さんと交換したぞ、それに蘭華の連絡先はもともと持っていた」


分かった。リリアンは馬鹿だ。

俺が、ニンフ寮に入ったのは、妹の蘭華とだぞ。連絡先を持っていないはずないだろう。


「畜生! 敗北感! け、けどぱっちゃんよりは早く連絡先ゲット! 私の勝ちだ! ふふん、悔しいか、悔しいだろう! 女子会であん……ごふう!」

そして勝てないと悟り、庵を煽りだしたリリアンであったが、庵は、満面の笑みで、リリアンの口の中に蓋が開けたてコーラをぶち込む。


「あらー、リリアンさんは、のどか湧いたんじゃないですか? ふふ、遠慮なく飲んでください。ほら、こぼすともったいないですよ。ほら、いーっき、いーっき」


「ごべ……ごほ……」


ああ、暗面の笑みでコーラをリリアンの口の中に流し込む庵。

俺に、あんな顔をしたことなんてなかったのに……く……流石、対社会性順応シスターの強襲隊隊長。痛いところを突く。


「もが、げほ! げぇえぇぇぇぷ! ごほ! し、しぬかと思ったぜ……げぇぇぇぇぇぇぷ」


「……女性としての恥じらいは、故郷に置いてきたんですね」


「いうな、育ちが悪いだけなんだから」


俺と庵は、残念な子を見るような目でリリアンを見るが、リリアンは恥じらいなどないのか、弁当を開ける。


「うっせえ! おお、流石は、刹那だぜ。弁当がうまそう……ってそうだよ、どうせならここで刹那のこと話していいか? ぱっちゃん」


「いですけれど……たぶん乱馬さんは、役に立ちませんよ。」


突然の話題変更に俺は不思議と思うが、俺も刹那さんのお手製弁当を開けながら、片耳で話の流れを聞いていたが役に立たないとは、心外であった。


「なんだ、刹那さんと良二さんのことか?」


「まあな、この前放したんだけどさ、ドキドキ良刹カップル爆誕作戦を始めようと思ってな」


な、なんとも頭の悪い作戦名。俺は庵をみると、私は無関係と言いたげに目を逸らす。


「うーん、別に勝手だが、俺はあんまり乗り気にならんな、お互いを知らないうちからそういう茶々を入れるのは」


「ほら、この人こんなナリで恋愛信者なんですよ。気持ち悪い」


「いや、ナリは良いと思うが……結構ぱっちゃんて、辛辣だよな。それになんというか、作戦で話していたぱっちゃんと乱馬の考え方って……まあどうでもいいや、飯食

おうぜ!」


どうでもいいのかよ。

まあ、良いのだが、確かに俺は恋愛してこその恋だとは思う。お互いを知り、信頼しあう。

それが恋愛のあるべき姿だと俺が信じるのであるから。

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