8.ブラコンシスター、モンスターハウスと言う女子会に挑む

「では、ニンフ寮女子会パジャマパーティーを始めたいと思います……」


「お、おおう、なんじゃこりゃ」


「おにい……タスケテ」


「はぁ、二人とも本当にごめんよ」


 おにいと寝ようとした蘭華は、いきなり庵さんに部屋まで拉致をされ、どんな拷問を食らうのかと思っていたら、唐突な女子会が始まりました。

なぜでしょう庵さんしかテンションが高くない。


「いや、二人とも、テンションが低いですよ」


「いや、女子会パジャマパーティーとか言っているが、これ、私の好きな人の話だろう」


あぁ……そういうことか、蘭華が帰ってくると、おにいたちがキッチンでどうしてか何かを隠すようにしていたが、刹那さんと良二さんのことか。

そんなことを聞かされていなかったリリアンちゃんだけは、目を輝かせる。


「おお! コイバナか! へへ、実は、私もそういったコイバナに興味あるんだよな! いやぁ流石ぱっちゃん! ここは、私の恋愛知識を生かす……」


「でしょ! リリアンさんにぜひリリアンさんには、男性目線でのご意見をいただきたいんですよね!」


「な……なぜだ。故郷じゃトレ・ボーの異名をほしいままにしていたのに……」


いやそれは、男性に向けた誉め言葉です。

うーん、流石リリアンさん。女性的でいて、どこか男前な態度や行動がおにいの好みにばっちりなのですが、やはり残念美少女です。パジャマパーティーでなぜか一人修道服ですし。


「うーむ、というか、私の好きな男性の話をするのは良いが、君たちの理想の男性も聞かせてくれないか? お互いの価値観を話してのが、その後の話がうまく進むものではないか?」 


刹那さんの話の誘導は、とてもうまかった。

こうやってお互いの中身を知ることで発言の真意を知る。これは話し合いが円滑に進むすべとしては、正解である。

それにつられるように、リリアンさんは意気揚々と話し始める。


「私の好みか……面がよくてあとは、デカいほうがいいな」


「り、リリアンさん! 蘭華ちゃんだっているんですよ! そんなはしたないこと!」


いや、チ〇コがでかくて面が良いって……おにいなのでは!

いや、おにいは、確かにかっこいいけど……それにデカいし、パンツもいい香りが……


「ぐ、ぐへへ、あ、蘭華は、パンツが良い香りの人」


「……なあ、庵ちゃん」


「なんでしょう刹那さん」


刹那さんと庵さんが私をなぜかすごい目で見てくる。いや私は変態じゃないのですが。


「蘭華ちゃんって変態だよな」


「ええ、ブラコンです」


「ぐ!」


ブラコンの何が悪いんですか!

蘭華は、おにいのパンツが好きなだけのいたって普通な……あれ普通ってなんなんでしょうか……あれもう訳が分からないです。


「ぐ、せ、刹那さんだって、盗撮、画面オタクが好きなくせに」


「な! そ、それは……そうなんだけれど」


猛反撃です。

蘭華を変態扱いするなんて、絶対に許せません。こうなったら、全て聞いてやります。


「で、なぜ好きになったんですか!」


「う、うん。そのさ……私って有名人だろう」


それはそうだ。

SETUNAは、あまりモデルとかに興味のない私ですら知っている有名人。

個人コスプレイヤーから、グラビアモデルへの転身。

熱愛疑惑で文〇砲が出た時も写真の服の着こなしが美しすぎて、会見でも伝説を残した。


「そうですね。有名ですよね。確かに私には好きな人はいますが、いまだにその人には告白できていません。もし、記事通りの熱愛ができているのなら、今の私はここにいません。私が今仕事をしているのは、好きな人と釣り合うためなのですから。もし熱愛が本当であれば、ここに私はいません。うん、やはり伝説です」


当時のセリフは、伝説を呼んだ。

蘭華もこの会見を見て、実は、少し興味がわいて勇気も出たのだが、当の本人は赤面をしていた。


「いや……うん。よく覚えているね蘭華ちゃん」


「いや、厄介ファンは全員覚えていますよ」


「ええ、伝説すぎましたから!」


私は、庵さんと熱い握手を交わすが、タバコを吸って呆れるリリアンさん……いや、普通この場でタバコ吸いますか。


「すぅー。はー。いやでもそれただ、奥手で告白できないだけじゃね」


「う、うぐぅ……そ、そりゃ私には、少し変な趣味があるし……」


「ああ、ドMだろう。そもそもなんでそうなった。教えてくれねぇと煙草がまじい

よ」


「……いや、私、元々。その中学の頃、陰キャだったんだよ。で、良二に一目ぼれしたのだけれど……そのアイツ、二次元と写真撮影にしか興味ないだろう。だから、その萌えキャラにコスプレしてくれると思ってさ、コスプレを始めたんだ。そりゃ最初は恥ずかしかったけどさ……」


一目ぼれからの純愛だと!

蘭華とんでもないものを聞いているかもしれない。てか、モデルの起源が一目ぼれって。

尊い。


「いや、コスプレ写真を撮ってくれた良二が、私のコス着替えの盗撮アカウントを作ってくれて拡散してくれたんだ。そしたらだんだんバズって来てな。コメントでシコッたとか気もコメを見るたびにいやだったんだけれど……その新しいコスがエロコスでそれを盗撮した良二がその……勃起していたんだ」


「は? いや待て、それがドMの起源って!」


うん? 機運が変わってきたぞ。変わりすぎてリリアンさんもたばこ落としそうになってるし、庵さんは、なんか察してすごくいやそうな顔になってる。


「うん……その日の夜、日課で良二のベッド下に潜り込んでたらさ……良二が私のエロコスでその自慰行為をしていたんだ。恥ずかしくて、悔しくて……そのまま私もイッテしまい、自分が、男の慰み者になる感覚が最高でぐへへへ、その自分がドMと気が付いて」


ああ、全然尊くない。うん変態同士の生事情を聞かされどうにもどういう表情をしていいか分からない。


「って、私の話ばかりじゃないか! そ、そうだ! 庵ちゃんの好みのタイプを聞いてなかったじゃないか! き、君のタイプはどういった男タイプなんだ!」


そ、逸らせてない! 話が全く逸れていない。

けれど、これ以上痴情を話すのも、もう耐えられないのか庵さんは、自分の好きなタイプを話し出す。


「私ですか……そうですね……何でもできて、何でも持っている。顔もよくて、勉強もできて、運動もできて、自身もあって完璧超人なんですけど、少し隙のある人ですかね」


「なんじゃそりゃ、そんな人間……」


リリアンさんはそこまで言いかけて何かを察したのかゾクッと身を震わせる。

いや、リリアンさんだけでなく、蘭華や刹那さんも同じ反応であった。


「そんな人から、奪いつくして、最後に残る自信やプライドすらも折れてなくなるあの時の表情には、堪らなくゾクゾクしてしまいますね……ああ、そういう意味では、私って、結構ツンデレなんですね」


「ツンデレですか……」


蘭華は、聞いてはいけないと思いましたが好奇心が勝てずについ聞いてしまう。

そして後悔した。


「私、乱馬さんのことは、ある意味では大好きなんです。ああ、あの表情や自信を折った時どんな顔を私に見せてくれるのでしょう……あの人のすべては私のものです。私より優れている人を……あぁ、考えただけで……っと、こう言った冗談は、どうでしょう! 皆さん、少し特殊すぎたので私もこういう方向にしようとしたのですが! ビックリしました?」


黒く深く底の見えない瞳。


「び、びっくりしたわ……流石ぱっちゃん。サイコパスだわー」


あの、見たこともない声音。


「そうね……庵ちゃんでゾクゾクしかけた」


「ら、蘭華も怖かった……。演技が上手ですね庵さん」


「えへへ……ほめられるとこそばゆいですね……」


そう、よくそういった笑った演技ができる。

庵さんの中にあるのは、嗜虐や支配といった欲求。それを隠すための表情があまりにもうますぎる。たぶん自分すらも完璧にだましている。

おにい……マジで逃げてください。貴方の思い人は、飛んだ化け物です。

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