9.ビックサム、秘密の部屋
窓のない研究室。実験動物とかはいないが、そこら中に散乱した資料が部屋の主がどれだけ雑で気を遣っていないかが分かる。
「相変わらず汚いな……」
「按摩君、君をこの学校に入れたのは私だぞ。片付けぐらいやってもらわんとな」
「そうですけど……」
俺は、掃除では、エプロンと軍手が必須と無理やり、俺の芸術な体に布をまとわされ、御園さんの部屋掃除をしている。
「で、学校生活はどうだ?」
「制服を着ないといけないのが惜しいが、それ以外は楽しくやっていますよ。てかあんた担任だから分かるでしょう」
「うん? 私は、研究以外は悪いが物覚えが悪くてな、正直あのクラスに愛着はないが……全裸基準で話されると脳がバグるが楽しいなら良好だ」
エプロンと軍手は身に着けているから全裸ではないし、全裸基準で話しているつもりもなかったのだが……。
「で、御園さんがそんな世間話をするために呼んだわけじゃないですよね」
「私と按摩君……乱馬の仲だ。ここぐらいなら普通に話そうと思ってね。で、どうだ
い? ニンフ寮は大丈夫か? 乱馬」
「姉ちゃん……これ、蘭華も知らないんだから聞かれるとも面倒なんだから、本当にここだけだぞ……そのまあ、楽しいよ」
御園さんとの関係は、正直誰にも知られたくない。それこそ蘭華にだって。
俺は、掃除をやめ、ベッドに腰を掛ける。
「それに乱馬、お前、花園君のこと好きだろう。まさかウチの寮きってのガチでやばい奴にホレるなんてな。ふふふ……いや人生分からんね」
「ホレたのはタマタマだ。姉ちゃんの邪魔をする気なんてなかったんだ」
「いや邪魔なんてないぞ.結果として、私の計画はうまく行っているよ」
御園さんの計画は、一言でいえば、大規模で遠回りなうえ回りくどい計画である。
本当にお人好しだ。
「そうだ。計画ついでにこれ、まとめておいたぞ」
「ああ、ありがとう。経過観察は、見て知るほかにも、こうやって文字で起こしてみ
るとしっかりと頭で言語化されるから助かる。うーん、ストーカーの才能あるんじゃないか乱馬」
「うるさいな姉ちゃん」
俺の渡したレポートを一瞥して御園さんは、面白そうに頬を緩ませる。
「まあいいさ、学校で友達もできているし、寮でも楽しそうにしているな。うん、私としては、乱馬や蘭華が楽しんでくれるのも計画の一環だしな。それに捕まりかけることも減ってるな」
「何が計画だよ……たく、ようやく手に入れた日常だぞ、そう簡単に手放す訳ないだろう」
そういうと御園さんはどこかも知訳なさそうに目を顰める。
「そうだよな……いや、遅くなって本当に申し訳ないと思っている」
「姉ちゃん、それは無し。俺と蘭華が普通に学校生活が送れているのだって、姉ちゃんのおかげなんだから。まあ、やり方は回りくどいけどな」
「手厳しいな。正直奴らをうまく丸めこむのだって結構大変だったのだからな」
「姉ちゃんって、他の奴らより偉いのにな。大人って面倒なんだな」
「まあそれが大人になるってことだよ。乱馬」
大人になること。
御園さんは、俺や蘭華が普通に暮らしていけるように、色々な手回しをしてくれた協力者だ。
人生で味方と思える唯一の大人なのだ。
「大人ねえ……そうだ、大人ついでに、そのレポートは捨ててくれよ。姉ちゃんに言われたから作ったけど、見られたら俺だってヤバイ」
「知ってる……乱馬の願いだから聞くけどさ。本当、良く出来ている」
そういうと、御園さんは、俺の作った、花園庵に関するレポートをシュレッターにかける。
「花園庵に関するレポートねえ……」
我ながら自分の作ったレポートがシュレッターに飲み込まれていく様は、どうしても茶利害を感じないものであった。
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