7.ビックサム、カレー味の

「ただいま脱衣!」


「帰りました……。はあ……」


 俺と庵が学校での勉強を終え、ニンフ寮に帰ると社会で生きるための拘束具(服)を解き放ち本来の姿(全裸)に戻る。


「どうした庵? ため息なんてついて。ホレホレ、俺みたいに元気に……よっと、金

的はNGだぞ。はは、いつも言っているのに庵はお茶目さんだな」

溜息を吐く庵を気遣う俺だが、庵は、俺を照れたのか、冷たい目で見てくる。


「元気なものは、しまってください。いい加減見飽きましたよ……」


「それなら俺の尻穴にあるホクロも見せて……」


「きゃ! やめ! 刹那さんにもらったサイン入り尻穴バイブぶち込みますよ!」


電動ドリル型のエグイ形をしたピンクバイブを回転ピストン運動させる庵なのだが、なぜそんなものを学校に持ってきているのだろうか。

しかし女の秘密は、茨の庭と教わっていた俺は、特に言及もしなかった。


「いや、そうでなく……本当に乱馬さんは欠点がないなと思いまして、どうしてか負けた気がしてため息が出てしまいまして」


「何を言う! 俺だって庵に勝てないことぐらいぞ」


「へー完璧超人さんが私に負けるとこってどこなんでしょう?」


挑発的な笑みに俺は、ふと考える。

勉強は俺の方ができた。運動や芸術に関しては得意で人間に負ける気はない。人気……いや、俺の美しさは芸術だし、友人もできそうだった。


「か、考えすぎじゃないですか?」


「ま、まて、今、出す! ……だす……」


灰色の脳細胞を持つ俺は、必死に考えた俺は、一つの真実にたどり着いた。


「母乳が出る!」


「うわ、キモ」


うん、いつもの照れ屋は変わらないな、流石は、マイスイートハニー(予定)。


「……またよからぬ妄想を。うん……これのいい匂いは……」


寮の共同キッチンからいい匂いがしてくる。

それを犬の様に嗅ぎつける庵は、キッチンに吸い寄せられるように歩いていく。


「ん? おお、お帰り、庵ちゃんに乱馬君。ご飯を作ったが食べるかい? あ、あつい!」


裸エプロンで揚げ物をする刹那さん。

うん、裸エプロンで揚げ物なんて、熱いだろうにやはり変態だ。


「……はあ、現実は本当に残酷だ」


「はうん! ああ、どうしてだろう。庵ちゃんの蔑むような目は、私の性癖に刺さる」


庵の冷たい目に胸が刺さるような気持ちになるのは分かるが、流石にヤバイ。


「いや、刹那さんは変態なのか? 裸エプロンで揚げ物なんてドMにもほどがある」


「うん、好きな女の子の前で全裸の乱馬君には言われたくないね」


「俺は、芸術なのでセーフ!」


「いや、二人とも変態です……いやそれより、刹那さんは、料理ですか? 量多くな

いですか? 別にみんな集まって食べる訳じゃないのに」


ニンフ寮は、変態が多く食事時間もバラバラになるらしく、日曜の朝ご飯以外に集まって食べることはないそうだ。

だから、料理は、基本自分の食べる分なのだが、刹那さんは、それ以上、明らかに一人じゃ食べきれない量の料理を作っていた。


「ああ、これは、良二の分でな。アイツ、放置してると栄養失調で倒れてしまうからな。それに若いの君たちや蘭華ちゃんが自炊なんてかわいそうだ。君たちの分もあるから、着替えてきてくれ」


メニューは、カレーに唐揚げ、ご飯。俺が蘭華ちゃんと暮らしている時の数倍豪華な食事に俺は感動してしまった。


「あぁ、こんな贅沢な食事。誕生日の時に食べたほか弁のハンバーグ弁当以来の感動」


「……全く、君たちはいったいどういう生活をしていたんだ。うん、完璧」

呆れる刹那さんは、唐揚げを上げ終わったのか、一人分の料理を盛りだし、ラップにかける。

それを見てなぜか庵はにやにやしていた。


「ははーん。それ、良二さんの分ですね……ヤケに手の込んだ盛り付けですね」


「そ、そりゃ……食べ物はおいしそうに盛り付けるだろうに……」


「エプロンのポケットちょっと膨らんでますね……ふふん」


まるで探偵の様ににやつく庵、いや別にエプロンの中には、何も入っていないだろう。

そう思ったが名探偵庵の勘とブラフが冴える。


「な! 私のホレ薬が! ……ないじゃないか」


「むふふ、やっぱりそうなんですね」


「な、はめたな! 庵」


何が、そうなんだ? え、何をはめた? うん?

いや、文脈から察するに、あのドMな刹那さんが絶頂せず、乙女のような赤面をしているし、良二さんにホレ薬入りの料理を入れている……つまり……。


「は! もしや、刹那さんは、良二さんと付き合っていて、さらに突きあうなかな

の……おっと! 全裸の俺は油断していない限り金的など! おい! 愛情表現が過

激すぎないか」


「乱馬さんはもっとデリカシーを……って、えと、せ、刹那さん?」


「ばばばば……あばばばばば! は、恥ずかしい!」


「いや、刹那さんの格好の方が恥ずかしいですが」


刹那さんは恥ずかしさのあまり、しゃがみ込んでしまう。

おそらく、これは……ドMの刹那さん。これは、もしやガチな調教プレイを……。

そんなことを思っていると、ジトーと庵が俺を睨んでくる。


「乱馬さん、まず考えてください。そもそも良二さんは、画面越しの女性にしか興味がないと豪語する変態ですよ。そんな男が三次元の女に振り向くと思いますか? それにこの反応は、乙女すぎる。それと私の厄介ファンの希望と願望から恋愛経験も初めて!」


「……つまり、処女」


俺たちが真実にたどり着くと、刹那さんは、恥ずかしそうに声をあげる。


「そうだよ! 私は、処女だよぉぉぉぉ! いや、マジ怖くね! だって、あんなものが体の中に入っていくんだぞ! それで、試しに買ってきた電動ドリルバ〇ブ携帯型だって怖すぎて、かん腸をして下剤を飲んだ後にケツ穴にバイブぶち込んで山手線を1周しかしたことのない生粋の処女ですよ! 畜生め!」


「うん、今日の晩御飯、カレーか、まあ、別に匂いもカレーだし大丈夫だな」


「想像させないでください! あと、刹那さんは、あとで女子会パジャマパーティー開きますからね! 絶対に集合ですよ!」


「は、はい……」


あ、これが恋をする女性の顔なのか。それに比べ庵と来たら。


「SETUNAス〇トロカレー」


「乱馬さん、本当に殺しますよ」


ああ、この冷たい目、絶対に俺のことを好きじゃない。く、いつか絶対、ホレさせて、連絡先を手に入れてやる。

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