17.ブラコンシスター、謀る
はい、いつものほぼ強制拉致をされている蘭華は、いつになく荒れている庵さんの愚痴を聞く羽目になっていた。
「本当になんであんな強引な手を使って……私は嫌いじゃないですが、最後のセリフだけは本当に納得いきません。なんなんです? 憧れているのに叶う訳がないって。恋愛は、人の心をもぎ取るための戦いです。叶うもなにも、叶えようとしない人が、うまくいく訳ないのに。蘭華ちゃんもそう思いませんか?」
「蘭華は、おにい以外の男性に興味がないので……ですが、蘭華、庵さんがおにいに本気で恋をしているんだなって思いましたよ。それこそ、押し倒してしまえばいいのに」
おにいのことだ、普段なら怒るが、好きな女性なら反応は違うのではないかと
淡い希望を持ったけど。
「押し倒したわよ」
「おし……え! ちょ! 庵さん! マジで!」
な、ななな、ということは、セ……性交を行って……でも、お、おにいだぞ。
あのクレイジー純恋愛主義者で私よりも少女漫画に詳しいおにいが童貞でない……。
「恋愛してからじゃないとそういうのは無いと断られたわよ」
「よ、良かった……」
「良かった……?」
しまった。
庵さんにだけは、言ってはいけないセリフを言ってしまった。
「べ、別にヨスガるとかレッツ背徳そういう訳ではなくですね……」
「いや、うん分かる。大事なお兄ちゃんだもんね。妹として嫉妬するのは分かる」
よ、良かったバレていない。
確かにおにいを性的な目で何度も見たことはある。けれどそれは結局、蘭華がおにい以外の男性があまり好きじゃないからであって蘭華は、いたって普通のブラコンだ。
普通のブラコン?
「ですがおにいも、おにいですね。好きとか、性交しようとか言う癖して、手を出さないなんて……馬に使う精力剤でも投与……」
「うーん。投与した性交渉で乱馬さんを恋に落とせないと思うので別プランで……」
恋に落とせれば使うんですね……。冗談でも庵さんに物騒なことを言うのはやめておこう。
目的が達成できると踏んだら本当にやりそうだし。
「な、なら、正攻法で、デートに誘うなんてどうでしょう?」
「それは無理」
「な、なんでですか?」
正攻法で恋愛して告白。そのルートなら、確実に行けると私は、思うのだが……。
しかし、庵さんは、顔を赤く締めを背ける。
「こ、この前、怒ってしまって気まずい。これ以上嫌われたくない」
め、めんどくせえぇぇぇ!
え、なんなん、精力剤逆レイプはOKで、デートは、NGって。
それに嫌われるも何も、おにいはベタ惚れですよ!
「いや、そんなこと気にしなくても、おにいは、一途というか周りを気にしない生き物ですしそこは気にしなくても……」
「で、でも、いきなりそんなこと言って、冷めたとか言われたら……死ねる! 殺せる!」
あ、ガチで面倒くさいぞこの人。
「えっと……蘭華が思うに何か理由があればデートできますよね」
「うーん。まあ、恋愛ではなくあくまで友好を深めるという意味なら、ぎ、ぎりぎり可能」
「な、なら、蘭華が三人で遊ぼうと誘って、当日、蘭華が用事ができたって言えば二人で遊べますが」
よくある少女漫画の展開。流石にこんなベタな作戦じゃ……。
しかし、庵さんは、目を輝かせた。
「それだ! 流石天才! 視点が神よりの神です!」
えぇ……急にIQ下がりすぎじゃないですか庵さん……とにもかくにも、おにいと庵さんのデート大作戦が幕を開けたのだが……いやな予感しかしない。
「ねえ、おにいー。アイスー」
「ホレ」
「たべさせてー」
「はいはい、あーん」
「あーん。くー、おにいに食べさせてもらうアイスはやはり最高だよ」
休日の蘭華は、大学で研究を続けるか、今日みたいに甘えたがり、俺の膝の上で一日を過ごすことが多い。
今日も、俺の膝の上で携帯をいじる蘭華にアイスを食べさせていた。
「おにいー。そういえば、蘭華これ欲しい」
「うん? 服か? ああついに俺の妹もファッションに目覚めたか」
「あー、うん、そうだよー」
「ら、蘭華! うぅぅぅぅ」
「お、おにい、なんで泣いてるの!」
ああ、いままで服とかには興味がなく、俺のお古を着こなしボーイッシュにまとめていた蘭華、スカートも履いてみたらと聞いたらと言ったら冷たい目で見られ、お金がないし無駄と一点張りだった蘭華がついにファッションに目覚めるなんて。
俺は嬉しさのあまり涙を流す。
「俺、今まで貯めたバイト代、全部おろしてくる! 最高の服を買ってやる!」
「お、おにいストップ! 服はそうなんだけど一つ問題があるの!」
「な、なんだ問題って」
蘭華をベットにおいて、財布とった瞬間、止められる。
蘭華は真剣剣な目で俺を見ると衝撃の事実を話す。
「服に興味のない蘭華、そもそも服を着たくないおにい……導き出される答えは」
「……!」
それは、大問題であった。
世界もうらやむ美形兄妹である俺達は、どんな服をも着こなす。しかしそれは、あくまで服を選ばなくても着られるだけであり、最高の一着を選べるわけでもない。
「助っ人か……良二さんと刹那さんは、休みの間、自分の部屋を愛の巣にして出てこないし」
「……リリアンちゃんは、前の一件で監督責任による反省文を書いていていないので、庵さんを呼びましょう」
俺は一瞬固まる。
刹那さんの一件で、ゴールデンウィークの間、庵とはろくに口をきいていなかった。
それもこれも、庵に理解してほしかったのに、感情がうまく理解できず、自分でも思ってないことを話してしまったことが原因であった。
「やだ、この前変なこと言って気まずい。これ以上庵に嫌われたくない」
「……」
蘭華が何とも言えない顔で俺を睨む。
「ら、蘭華さん?」
「おにい、とりあえず蘭華もいるし大丈夫だよ。どうしても心の準備が必要なら明日、ゴールデンウィークの最終日だしその時行こう。ね」
「し、しかし」
「行こうよ。ね。お兄ちゃん」
……蘭華が俺のことをお兄ちゃん呼びするときは絶対にひかないという意思表現。俺はあきらめて首を縦に振る。
「分かった。連絡は頼むよ」
「うん、もう連絡済……あ、OKだって」
「なんと準備の良いことやら」
我ながらわが妹は、強い。それを実感し、俺は、明日、庵と仲直りするための準備をするのであった。
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