13.ビックサム、トーテムポール

「ぎゃ! 変態!」


「失礼な、俺は変態ではない! 芸術だ」


 良二さんと父さん達からカメラパーツを買いに来ていたら、いきなり刹那さんに殴られそうになった。

俺が全裸になり、男であることを信用してもらい、話をしていると、蘭華と庵が、ここら辺の半グレに絡まれていた。

俺は、慌てて助けに入ったのだが、こいらは、あまつさえ芸術的な俺のビックサムを握りやがった。


「ち、ちん……」


「俺のビックサムは、トーテムポール! オワチャ!」


「ぎゃあぁ! ばっちい!」


俺は、ビックサムを軸足に回し蹴り渾身の一撃を半グレAに叩きこむ。

なんだ、5人程度なら俺一人で全然処理できるじゃないか。


「二人とも、大丈夫か!」


「お、おにい!」


「それは、俺でなく、俺の尻だぞ蘭華」


「知ってるよぉ……怖かったぁ……」


知っているならいいが、そんな俺たちを見て、庵は冷めたような目で見てくる。


「何も言いませんよ……ただ、いちいち脱ぐなんて……はあ……」


うん、いつも通りだな。

俺は、安心し男たちを向くと、男たちの装備は、おそらく一番脅威があるナイフが三本にメリケンの様に腕時計を握る奴だけ。銃が居なくて安心した。


「おい、今引くなら逃がしてやるが……」


「あぁ! うるせえわ!」


武器を持っていきり立つ等、素人もいいところ。父さん達が見ている。教わった護身術をここで見せるしかない。俺は、拳を構えると、半グレがナイフを持って襲い掛かる。


「風見珍」


「あ、当たらねえ」


「ふはははは! 風見珍は、全ての攻撃を読む。そして……秘技ペニエラ!」


俺は、ビックサムを軸に高速回転し、蹴りやチョップを全力で半グレに攻撃を打与える。


「最低な技すぎます」


「うむ……母なる大地、地球を孕ませんとする勢いを感じる」


「しかし、空を司り風見珍に地のペニエラあの威力でまだ未完成。素晴らしい」


「え、えっとお二人は」


「「俺たちは、珍技を乱馬に伝授したものなり」」


「つまり変態ですね」


ありがとう父さん達、俺頑張るよ。

俺の珍技は、元々父さん達の技を応用した技、父さん達のオリジナルは、俺をはるかに凌駕する。


「しかし……」


「ひ……」


俺は、俺の大切な人に手を出そうとした愚か者に等に容赦はしない。


「ブレイ珍グダウン! お前の敵は、ナイフを持った奴。持った奴。武器がないと戦えない臆病者とほかの奴が言っていたぞ」


「ひ……ひぃ……俺が……弱い」


ビックサムを半グレの前で高速で揺らす。

半グレたちは、動きを止め、ほとんど人間が目をトロンとさせていく。


「俺は……つええ!」


「ああ! なめんなよダボ!」


「お、お前ら!」


一人を除いて半グレが仲間同士で殴り合いを始める。

ブレイ珍グダウンは、興奮状態の相手の戦意をほかの奴に移す催眠術のようなもの、自分に自信がなければないほどかかり易いのだが。


「お前は、ほかの奴に比べ、少しは強者の様だな」


「だ、だからどうした! 俺はまだ……」


「ふん」


「うお! お、俺のナイフが!」


俺はビックサムでナイフを弾き飛ばし半グレを足払いで転ばせると大きく飛び上がる。


「俺の必殺珍技を見せてやろう! とう!」


「や、やめて! ぐえ!」


「必殺珍技エクストリームプレス寒風珍擦」


残った半グレの顔面に下半身をこう擦り付ける必殺珍技この技は、人に最も見られたいものを押し付けることにより起こる性的興奮をエネルギーに腰振りが音速を超え、相手の顔面周りの酸素を燃焼させ、強制的に酸欠に陥らせる悪魔的技である。


「乱馬め、あの寒風珍擦をマッハ2の速さにまで到達させるとは」


「まさに神速の高潔(ファストノブレス)」


父さん達は、俺の雄姿を見て涙まで流してくれていたが、庵はというと、頭をかかえていた。


「ま、守ってくれたのは嬉しいですが、なんというか微妙にうれしくないというか……乱馬さんの交友関係ってなんなんですか……」


呆れる庵であったが、父さん達は、俺にとって父さん達でしかない。

俺が、学校に転入するまで世話になったのが父さん達というだけなのだが……。

しかし、今は、刹那さんと良二さんを見守ることにしよう。

俺が、良二さん達に目を向けると二人は珍しく言い合いをしていた。


「良二! 流石に紛らわしいぞ! そういうことなら先に連絡してくれれば良かったのに!」


「刹那はだから分かってないんだよ! 刹那を盗撮する機械を作るパーツを買いに来たのに刹那にそれを話したら意味がないだろう!」


「バカ! 私は、いつでも写真くらい取らせてやるのに」


「バカはそっちだ! 盗撮だからいいんだろう!」


ああ、なんと和やかなのだろうか。しかし会話は全く持って……。


「変態同士の会話だな」


「今のところ一番の変態は、乱馬さんですが」


なんとも辛辣な庵であるが、それすらも愛おしく感じてしまう俺であった。

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