12.ブラコンシスターと、イチモツ
「えっと、蘭華、今日は、学校で研究を」
「蘭華ちゃん! 人は研究より大切なものがあるんですよ」
「そうだぞ、私なんて、学校に行くほうが珍しかったんだぞ」
「いや、蘭華ちゃんにリリアン君の言う通りだぞ。大学など人生の夏休みとまで揶揄されてだな……」
「研究……」
ゴールデンウィーク初日、おにいが用事があり、出かけてしまうため、蘭華は、研究室で研究の続きをしようと思ったのですが、庵さん達に捕まりなぜか良二さんをストーキングしていた。
「あの良二が外出なんて、それも新宿の町なんて……オタクに無縁な場所へ! そうこれは、良二パパ活疑惑が!」
良二さんに限っては、ないと思うのですが。
しかし刹那さんは、良二さんのことになるといつもの冷静さを失ってしまうきがします。
「パパ活ですか……それは、危険ですね。私なら期待させて、むしるだけむしって、警察に……良二さんのピンチですね」
「まじか……まあ、あの二次元大好き男に限ってそんなことあるかよ……けど私もカモにするな」
だ、だめだ!
この大人たちは、そろいもそろって脳みそが腐っています……。
「まあ、何もないと思いますが」
良二さんは新宿アルタ前で誰かを待つようにスマフォを確認している。
待ち合わせみたいではありますが……。まさか女なんて……げ!
「おい嘘だろ、なんだあの美人、顔を隠しているが目鼻立ちから何まで……まさか本当にパパ活なのか」
「おお、やっべえ瞬間に立ち会っちまってる」
良二さんに近寄ってきたのは、少し大きめの服にジーンズを着こなした、マスクをつけ帽子をかぶった中世的な人……おにい。
おにいは、ウチにお金がないからと言って、蘭華でも着れるような中世的なファッションを好む。服を着て蘭華とお買い物に行くときの格好なのだが、確かに良くしまいに間違えられた。
「あ、あれは、お……」
「パパ活確定ですね! これは追跡して証拠を押さえなくてはいけませんね」
庵さぁぁぁぁぁん!
違うんです! あの美人、おにいなんです!
ああ、おにい、なんでこういう時に限って一番布面積が大きい服を着てしまうの!
蘭華、もうどうにもできませんよ!
「あんぽ、あれは、おにいで……」
蘭華は、意を決して、みんなに伝えようとしたのだが、目がらんらんとして楽しそうな庵さんは、まさかの現実が見えていないようであった。
「やだな! 乱馬さんが、服を着て街中を歩ける訳ないじゃないですか」
た、確かに!
おにいめ、こんなところで妙な説得力を産んでしまうなんて……。
でも、おにいの服を知っている女子は、蘭華だけで……。
「ふへへ、おにいだぁーい好き」
「おーい戻ってこーい。お兄ちゃんとはまた会えるだろうー」
「せ、刹那さん! 別に私は、おにいが人より好きなだけで、おにいが居なくてもお出かけくらいできるんですよ!」
「お、おう」
いや待て、おにいが蘭華以外の人とお出かけなんて……おにい、実は、男好きなのでは!
「ではストーカー開始です!」
「いや、ストーカーって……まあいいか、お、動いたね……方向は……」
蘭華たちは、おにいたちを追って、新宿の町を進んでいくのだが、そこは歌舞伎町のアングラ部分に進んでいく。
「ねー、おねーちゃん。どう? 稼げる仕事が……」
「ひ!」
蘭華はいきなりチャラい男に話しかけられ、ビックリして、変な声が出てしまうが、刹那さんが蘭華の間に入ってくれた。
「さー、蘭華ちゃん、どこ行くか?」
「え、ちょ、刹那さん」
「ねぇーえおねえちゃ……」
「忙しいので話しかけないでくれますか」
刹那さんの圧がすごく、男は、さっとその場を去ってしまう。男が去ったのを見ると刹那さんはふぅーと息を吐く。
「良かった……危うく犯されるところだったわね」
「おか! え、ええ、治安が悪いと言っても新宿は、法治国家日本の一部ですよ! そんなことがある訳」
「ああ言ったのは、風俗のバイト募集だったり、AVの撮影の話だから、ろくに話な
んて聞く必要が……」
そんなことを言っていると、後ろからついて来ていたはずの庵さんとリリアンの姿が消えていた。
「え、えーぶいにふうぞ……」
蘭華は、慌てて辺りを見ると、路地裏から、すっきりとした顔のリリアンさんと庵さんが出てきた。
「いやー、ぱっちゃん、さっきのはどこで買ったんだ?」
「ああ、あれは……で、見た目もファンシーですが威力は」
「……あの子らは、たくましく生きるわ」
「……ですね」
考えたくはないです。え、なんで二人して、ハンカチで何をぬぐいました?
白いハンカチが赤く……。
「ああ、警察だ! 私は何も……ああん、コスプレだ? これはコスプレじゃなくて制服で……え、もっと問題?」
「あー、私は関係ないのでー、おーい刹那さーん、蘭華ちゃーん」
「おい! ぱっちゃん! ぱっちゃ……」
何があったかは聞かないでおこう、ただいまはリリアンさんが、警察に連れていかれた事実だけが残ったのであった。
「えーっと、庵ちゃん大丈夫かい?」
「はい、どうやらリリアンさんは、事情聴衆が終われば釈放されるとはおもいます
が……全く何をしたのやら」
いやいや、アナタ……絶対に共犯……うん、言わないでおこう。蘭華もリリアンさんノニの前になってしまう。
「たく、馬鹿なことを……うん、あの美少女、どうやら新宿の奥の方に行くぞ」
「あっちは、新宿4丁目、ホテルや少し怪しいお店があるエリア……」
お、おにい、待って、あかん。そらあかん!
蘭華、バラ族の趣味は、ないけど……いや、おにいと少しさえない良二さん、そんな二人が……、おにいが全ての劣情を受け止め……うん四丁目? いやいや、そっちは……しかしおにいがバラ。
「ふへ、ふへへ」
「さ、流石、兄妹です。妄想をしている時の妙に下品な表情が、乱馬さんそっくりです」
「げ、下品ではないです……その……へへ」
「うん、蘭華ちゃんもしっかり兄妹だね」
く……何も言い返せません。しかし……うん、帰りは、池袋の乙女ロードへ……。
そんな乙女ロードで買うものなどを考えて歩いているうちに新宿4丁目の裏通り、表通りは、観光客向けに整備されているが、裏通りに一本入ると、ゴミは落ちているし、路上喫煙がだめなのにタバコを吸っている人は多いわで少しなつかい場所。
「……うん、なんだ、あのスーツをばっちりに決めた男たちは」
そんな中、おにいと良二さんは、スキンへッドの二人組に声をかける……うん?
「え、待ってください、良二さん財布からお金を」
「本当か! 庵君! 嘘だろう良二!」
ああ……なんだ、別に心配することないじゃないか。
私は安心して、二人に話しかけようとするが、刹那さんは早かった。
「ちい、やはり! おい! おまえらあぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ちょ! 刹那さん! 別にあの人たちは怪しく」
刹那さんは、おにいたちの方へ向かって全力で走っていく。
……お、おいてかれた。
「あちゃー、乱馬さん、生きてください。蘭華ちゃん」
「え、えと庵さん、知っていたんですか」
こ、この女。やはり危険だ。おとなしそうに見える瞳の奥には、この状況を楽しんでいるような恐ろしさがある。
「え、知っていたも何も、見るからに乱馬さんじゃないですか。……いやまあ、あんなに私服が似合うとは……それに美少女でも通じるなんて……」
「い、庵さん、なぜそれを刹那さんに言わなかったんですか?」
怖い。
私の様に言えなかった訳ではない。むしろ私が言おうとしたのを遮ったのも庵さんだった。
「え、だって、蘭華ちゃんだって言ってなかったじゃないですか?」
「そ、それは」
「いやー、やはり、あぁ……素敵……」
「ひぃ!」
私は思わず、少し引いてしまう。その目はなんだ、人がしていい目なのか。
言わなかった。確かにそうだが、誘導された答えの様で、どうにも気持ちが悪い。
「ああ、蘭華ちゃん。怯えないでください。本当の私に気が付いているのは、おそらく蘭華ちゃんだけですのでかなり素で話しますけど……」
「そ、それ、おにいは、気が付いていないと思います?」
「ああ、どうでしょう。少なくとも勘付かれているとは思います」
まるで思い人を思うかのような顔、しかし、それは、恋愛ではない。
「でもね良いんです。きっと彼なら、こんなどうしようもない私をきっと……きっ
と……ふふ、これは内緒ですよ」
「あ、はい」
「きっと彼なら私を愛して愛した末にすべてを投げうって殺してくれます。ああ、そ
の時の表情が、堪らなく見たい、そのためなら私は死ぬことだっていとわない」
まさに変愛……偏愛……。
「ひ……」
蘭華には、6年前より以前の過去の記憶がない。
正確には、ショックな出来事が起こったことによる解離性健忘症である。
完全に記憶がない訳ではないが、過去のトラウマをえぐる記憶の話や、過去の印象を思い出すような体験をしてしまうと動悸が激しくなってしまう。
庵さんの表情はまさに過去を思い出してしまうような経験を今しているということ。
「い、いやあ……」
「え、ちょ! 蘭華ちゃん! す、すみません、流石に怖すぎましたか! あはは、昨日見たホラー映画にずいぶん影響されてしまいまして」
ち、違う。この人は、おにいたちの様な変態ではない。
もう壊れてしまっているんだ。
「ねえ、お姉さんたちー、ちょっとお茶を」
「……あ、は、はい私たちですか」
蘭華が恐怖している中、怪しい男が私たちを囲む。蘭華は、腰が抜けてしまい動けない、そんな中、庵さんは、蘭華を守るように前に立つ。
「そそ、二人ともかわいいね……ちょっと稼げる仕事があって……」
「結構です。二言目には、お金で釣ろうなんて最低です……すみませんウチの妹がち
ょっと風邪っぽいので今日は……」
「まあそう言わずにさあ……」
「あ、あ……」
蘭華は、危ないと男たちに言おうとした。庵さんは、カバンから何かを取り出そうとしている。
しかし男たちは、気が付かずに庵さんの肩に触れようとした。
庵さんは、目が恐ろしい笑い方をしている。
もうだめだ、そう思った瞬間であった。
「おい、俺たちの連れがどうしたって」
男たちが握ったのは、庵さんの肩ではなく、逆立ちをした全裸おにいのイチモツであった。
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