2.ビックサム、安易なパロディをさせてくれない
「……」
目が覚めると、そこは、月あかりの射しこむ教会の中。
体が動かない。俺は、どうやらバスローブを着せられ手錠で椅子に拘束されている。
まだ辺りが棒っとしてよく見えないが同じく正面を見つめ拘束される庵に周りには、シスターは、10人。全員がテーザー銃を持ち待機している。
「やあ、おはよう」
声のしたほうを見ると、そこには、スタイルがいいのにボロボロな白衣とジャージを着たをこの場に似つかわしくない女性が教壇の上に座りにやにやと俺たちを見る。
「今の君達は、変態かな?」
「アンタは……」
俺がボソッとつぶやく。
「私は、草薙御園(くさなぎみその)聖ロザリア叡智学院2年H組担任、悪いけど君たちには、秘匿……」
「安易なパロディは、やめてもらえませんか! というか! なんで私まで変態扱い! おかしいです! 監禁です!」
俺は、御園さんの安易なパロディに乗ろうとしたがそれを拘束された庵が止め思いっきりツッコミを入れる。
「やれやれ、花園庵。花園君。君、自分が普通の人間だと思っているのかい?」
「そ、そうですけど!」
「はあ……本当に……。いいか、普通、全裸の男を見て冷静に批評をする奴がいるか?」
「う……」
いや、庵がいるだろう。庵は、芸術が分かっているからこそ冷静に俺とかっこいい俺を思案しあっていたんだぞ。
そう言おうとしたが、なぜかつまらなそうな表情の御園さんにムッとした顔の庵を見ると何とも言えず口ごもってしまう。
「まあいい……按摩君。君の方は、どうかな変態か?」
「変態? 俺は、芸術だぞ。そんなかっこいい俺が、全裸になってもそれは芸術品だ。そんな俺を変態と呼ぶなんて……ハン! 品性を疑うね!」
「いや、まずは自分の品性を疑ってください」
庵が何か言ったような気がするが、俺と庵は運命で結ばれている。きっと今の言葉は、聞き間違えだ。うん、そうに違いない。
そんな俺達を見て御園さんは、教会に響くほどの大きな声で爆笑してしまう。
「あーははは! 合格だよ! いーひひ……正直者と嘘つき最高じゃないか! ようこそ、聖ロザリア叡智学院高等部へ歓迎するよ」
まるで意味が分からなかった。
学校へ通える? その言葉は、俺にとって福音のように聞こえた。
「学校に通えるのか……」
「そうだよ。幼稚園から大学までエスカレーター式の全寮制の聖ロザリア叡智学院。表向きは、宗教系のが学校だけれど、裏では、変態の保護更生を行う機関でね。それに伴って、変態性の研究を行っているんだが、何分変態性は、自制が効きづらい。だから、今日みたいに対社会性順応シスターが犯罪を未然に防ぎ、揉み消す。まあ、簡単に言っちゃえば、君たちは、一般学生生活を保障されたモルモット。研究対象なんだよ」
こうやって拉致された理由は分かったが、それ以上に学校に通えるということに俺は、喜びを覚えていた。
義理の両親に俺と妹は、強姦されかけ未然に防げたが保護、親戚には疎まれ、最低保証の生活すらできず、今の父ちゃんたちにも迷惑をかけたくない為、俺は、高校に通わず、年齢詐称をしてヌードモデルやアルバイトで生計を立てていた。
そんな俺が学校に通える。
そんな喜びもつかの間、庵は、現実を見ていた。
「待ってください! 私には、私の学校が!」
そう今の生活である。俺には妹がいるし、庵もおそらくほかの学校に通っているのだろう。その生活は、どうなるのかは気になるが、ひょうひょうと御園さんは答える。
「あー、転校ね。これ、強制だから。抵抗すると君たち捕まっちゃうよー」
「な! うぅぅ」
不服そうな庵であったが俺も聞かないといけない。
「俺には妹がいるんだ。妹はどうなる? 全寮制なんだろう。妹と暮らせないのは困る」
「それなら、妹ちゃんもうちに転校すればいい」
「ならOK!」
「ちょ! 乱馬さん! 少しは抵抗をしてください!」
あ、初めて庵が俺の名前を呼んでくれた。すごくうれしい。
それに学校に通えるなんて思いもよらなかった。やっぱり脱ぎ続ければ、良いこともあるんだな。
そんな俺たちを見て御園さんは、俺たちに手を向けると意気揚々と声を高らかに言い放つ。
「ようこそ! 聖ロザリア叡智学院へ!」
こうして、俺は失った青春を取り戻していくのであった。
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