19.ビックサム、おしゃれコーヒーとおしゃれな一杯を求めて

 場所は変わり、おしゃれコーヒーショップ。

不機嫌な庵は、ブラックアイスコーヒーをすすりながら俺を睨む。


「で、弁解は?」


「あ、あの蘭華は?」


「蘭華ちゃんは、研究で進展があったので急遽学校に行くとのことです。連絡入っていると思うのですが」


「う、うそだろう……」


俺は慌てて携帯を見ると、全く同じ連絡が蘭華より来ていたがスカウトマンのせいで気が付いていなかった。


「すみません」


「で、何か言うことはありますか?」


……はめられた。

結局、蘭華は、服に興味を持ったのではなく俺と庵を仲直りさせるため渋谷集合にして、自分は用事があると約束をほごにしたのだ。妹ながら流石は、按摩家の血を継ぐものである。


「助けてくれてありがとうございます」


「お礼は大切ですが、詫びるのも大切だと思いませんか?」


「おっしゃる通りです」


俺は、自分みたいな性癖の持ち主は、真面な恋ができないと言ってしまった。

それは普段から庵にアプローチをしている自分をこき下ろす行為であり、それは、好きと言っていた庵すら馬鹿にする行為であった。


「俺は変態です。ですが普通の恋もできます。俺が間違えていましたすみません!」


「うーん……個人的にはもうひと悶着できるイベントだったのですが。そんなストレートに謝られると照れますね……うーん……まあ許しますが……」


庵は少し照れ臭そうにアイスコーヒーに空気を入れブクブクとする。


「おお、ならこのままデートだな!」


許してくれた喜びで、俺は、デート宣言をしれっとするのだが、庵は俺を冷たい目で見る。


「あくまで友達としての遊びです。いいですね。遊びですよ」


「なるほどな! よし! これを機に絶対に惚れさせる」


「全く……いちいちリアクションの大きい人ですね」


庵は携帯をいじりだし、遊びに行く場所を検索しだす。


「そうですね……まず、次郎ラーメンは外せないですね、その後はカラオケでストレス発散を……」


な、なんだそのクソみたいなデートプラン。

次郎ラーメンでニンニク臭くなった後にカラオケという密室でニンニクの香りを充満させて歌うなんて最低だぞ。


「まって、それ本気で行ってる?」


「はい、次郎は外せないですよね」


「むしろ次郎は外さない? ファーストキスがニンニクの味は、流石に嫌すぎる」


「え……なんですか。一回遊ぶだけでそこまで発展しようとか思っているんですか? 

気持ち悪いですよ……」


「いや、もっとお昼は、おしゃれな映えレストランで」


うん、デートは、映えるレストランでご飯を食べて、遊園地でショーを見て観覧車で夜景を見る。そういうのがデートであって……。

そう主張したが、庵の冷たい視線が俺を指す。


「いや、そもそもご飯を食べるのに写真を撮ってSNSで承認欲求を満たすのはさすがにないです。写真を撮っている間に料理は冷めますし、投降した後もコメントが気になって食事に集中できないじゃないですか。それに比べて次郎は素晴らしいです。ロットを守るために客も店員も一心になりラーメンをすすりバトルをする。食事とは元来、食べ物や職人さんに感謝をして食べるものです。次郎にはそのすべてが詰まっています」


すさまじい次郎愛に俺は驚くが、普段見ない庵の熱い食事の考え方に対する語りに俺は喜びを感じている。

デートは、互いを知るものである。そう考えると俺は、庵の次郎愛について気になってくる。


「そうだな! 分かったよ。次郎へいこう」


「本当ですか! 次郎行きますか!」


ああ、こんなにうれしそうな庵を見れるなんて……嬉しい。

そんなことを考えている自分に俺は驚きを隠せなかった。

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俺のビックサムをメインヒロインに見せつけたら、一目惚れしました。 優白 未侑 @siraisi

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