5.ビックサム、野球感覚でぶっこむ

「おかしいです! SETUNAが変態だったなんて! 絶対におかしいです!」


「いやいや、刹那さんはHENNTAIだ」


「もういいですよ……あと服を着て出て行ってください」


「それは無理だ。俺の美貌は芸術だから、隠すことなど本来はできないんだ」


 歓迎会を終えた庵はどこか心ここに在らずという表情であった。引っ越し自体は、シスターさん達のおかげで終わっていたが、どうにも庵はいろいろな感情がこみあげ拗ねて、ベッドにうずくまっていた。


「そうですか……本当最悪です。変態扱いされて強制転校までは良いです。ですが憧れの人が変態だったということには、ショックを隠せないですよ。私の気持ち乱馬さんには絶対に分かるはずがないです」


「そうだな。分かるわけがない」


「……乱馬さん、アナタ、私のこと本当に好きなんですか? そういう時はもっと慰めてくれてもいいのに」


顔を俺に向け睨む庵は、恨み言の様につぶやいてくる。


「何を言う。お互いに理解ができないから人は楽しんだ。俺は、庵がどんな奴でも軽蔑などしない」


そう、庵が刹那さんに向ける感情は、きっと俺の恋に似た感情なのだろう。だからこそ俺は、正直に答えなくてはいけない。


「そっか……なら私が、淫乱でも」


「好きだ」


「私が、嘘つきでも」


「好きだ」


「私が人殺しでも」


「好きだ」


例えどんな庵でも俺は好きだ。自分の気持ちには嘘をつかない。自分の趣味が人と変わっているのは知っている。

蘭華ちゃんは、身内だから認めてくれた。けど、他の人に認められたのは初めてだ。恋に落ちない訳がないだろう。


「ふーん、そうなんっすね……バカみたいです」


「バカで結構! 俺は、庵の心を射止めるまで絶対にあきらめない!」


「じゃあ……これなら!」


そういうと庵は、ベッドから起き上がり俺の手を引きベッドに倒すと、馬乗りになる庵は、少し恥ずかしそうな表情になる。


「なら、今からヤらせてあげます。だからもうこれっきり私のことを忘れてください!」


「……」


庵はパジャマのボタンをはずし、中から黒い下着がちらりと見える。いつもなら興奮するが、俺とビックサムの心はいたって平然としていた。


「それは無理」


「な、なんですか! 好きな女とヤれるんですよ! それ以上に幸せなことはないんじゃないんですか!


「怯えている子と性行為なんて、できるか。もっと自分を大切にしてくれ。じゃないと俺は本気で怒るぞ」


俺の純粋な怒り。

性行為とは、愛を例える上で崇高な行為だとは確かに思う。しかしそれは、お互いに愛があって初めて成立するもの。

愛がない性行為は、動物にも劣る行為だ。義理両親に俺たち兄妹がカメラの前で押し倒された時のことを思い出す。怒りと衝動。忘れる訳もなかった。


「なにキレてるんですか……。それに私が淫乱でも愛してくれるんですよね」

煽るように俺を見て勝ち誇る庵に俺は、思ったことをしっかり伝えてあげないといけない。


「愛すよ。けど、ヤるより今は、連絡先が欲しい」


「いや意味わかんないです。人の部屋で全裸のくせに体を求めないなんて」


「いや、最終的には、白い壁に赤い屋根の庭付きマイホームで子供三人と有意義に暮らしたいのは、本当だ。しかし違う」


「きもいです」


そう性欲がないわけではない。正直、無理やり押し倒されるという展開でなければ、本能のまま愛を持って犯していた。けど本当に違う。


「いいか、俺は、庵と俺の体について語らったあの瞬間が本当に楽しかったんだ。だからもっと語らって、お互いにもっと知り合ってから行為に及びたい」


「恋愛主義者ですか?」


「違う」


「なら、なんです? 男は獣ですよ。体を求めて当然です」


俺は、そういう男ではないそう伝えたいが、まだ庵を全く知らない。それと同じよう

に庵も俺を知らない。

それなら、まずは俺から伝えないといけない。俺のことを!


「違うね。俺は、蘭華ちゃんと一緒に義理の両親に強姦をされそうになったんだ! そりゃ、愛のない性行為なんて嫌いにもなるだろう。」


「こ、この人、さらっととんでもないことを……」


困惑する庵であったが、俺は引かない。俺と蘭華ちゃんの間ではもう笑い話だから、庵も交えてみんなで笑って話したいと思ってしまった。


「そうだよ。俺は、義理の両親たちを強姦されそうになったから、手元にあったルームランプで殴ったよ。何度も何度も、気が付いたら、そこには力なく倒れる血だらけの義理の両親、あいにく死ななかったし、状況から正当防衛が認められたけど、それは法律的なもの、いまだに義理の両親は植物状態だ。俺の手は、血で汚れているんだ。それは、知ったうえでまだ俺とやりたいか?」


ああ嫌われる。

例えどんな理由があっても人を傷つけるな、悲しめるな。

俺のもうこの世にはいない本当の母との約束を破り今がある。こんなことを言われて庵はきっと俺のことを嫌いになると思う。そう思ったが想像と現実は全く違ったのである。


「そうですね。からかうのは終わりです。私が悪かったです。……その、つらい話をすみませんでした。私、ちょっと元気が出ました。明日からやってけそうです」


「そっか、じゃあ、庵の過去も話してくれ」


そう、俺は、自分の過去を話した。俺も庵の過去を知りたい。美しい俺の素敵ポーズああ、黄金比も真っ白な俺のイケメンポーズこれを見て話さいない女などいないはず。


「……え、なんでですか?」


動揺を隠せない庵であった。困惑されないように俺は、包み隠さず本心を話す。


「お互いを知って、セ〇クスしようぜ!」


「出ていけ! 変態!」


俺は、思いっきり蹴飛ばされ、庵の部屋から追い出されてしまった。本当に恥ずかしがり屋なんだな庵は……照れるぜ。

俺は、時期を改めるため、一度、部屋にそのまま戻ることにしたのであった。


「あぁ……最高……」


庵か声が聞こえた気がしたがきっと気のせいであろう。全く本当に照れ屋だぜ。

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