12月22日(金) 士郎


 けいから電話がかかってきて前置きもなにもなしに日曜集合だと言った。

 日曜といえばクリスマスイブだ。


三田みたを放っぽってそりゃねえだろ」

「心配すんな、あおいもいっしょだ」

 さらっと圭が言う。

 せっかくのイブをふたりで過ごせばいいのにそこにあえて士郎しろうをくわえようって発想がいかにも圭と三田だと士郎は思った。場所はあのいつもの居酒屋だ。クリスマスに居酒屋をチョイスするのもあいつららしい。

「碧が士郎と話したいってよ」

「三田が? なにたくらんでんだあいつ」


 この調子だとまたとっとと彼女をつくれと説教されそうだ、とにがわらいする。たったふたつ下とはいえ体育会柔道部において先輩後輩の序列は絶対の正義だ。だというのに三田碧という女は平気で踏みこえ説教してくるのである。そして士郎もおとなしく聞いてしまうのだ。

 それは碧のお節介な情のあつさと士郎の素直なおおらかさゆえであって、ふたりの掛け合いをいつも圭はにやにや見ている。


「久しぶりにがっつり飲もうぜ」

 圭の声はなんだかたのしそうだ。


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