12月13日(水) 明莉


 けっきょくまたあおいに相談している。

 店もいつもの居酒屋だ。となりの話が筒抜けになるようでいて陽気な客たちはみんな自分たちの話題にいっしょうけんめい、だから他人の話に耳をそばだててるひまはない。こみいった恋話コイバナをするにも不都合はないのだ。


 碧はやっぱりこのまま別れてしまえに一票。きっぱり別れて次の恋に行きなって、いいひと紹介するよとまで言った。

 まったく碧はわかってない。いい子だとは思うけど。

 からみ酒になってしまって、さいごはケンカぎみになって店を出た。いまはひとりで駅のホームを明莉あかりはふらふら歩いてる。ぐでんぐでん。碧とはどこで別れたんだか覚えちゃいない。頭がまわる。


 ぷあっ、ぷああーん、と耳をつんざく警笛がうしろから聞こえて振りかえると、眩いライトが明莉の目のまえにひろがった。

 つぎのしゅんかん、手を引っぱられたと思ったらすぐ顔のよこを烈風が通りすぎていった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る