12月20日(水) 士郎


 きのうの夜からほっこりした気分がいまもまだつづいて士郎しろうの心をあっためている。すこし早めのクリスマスプレゼントをもらったみたいに。プレゼントというのはいま膝のうえにあるチェックのブランケットだ。

 つぎつぎ増殖しまくる仕事をやっつけるためキーボードを超速タイプしているあいだも、つい口もとに笑みが浮かぶ。


 だれからのプレゼントなのかはわからない。

 きのう忘年会のあと、酔いと疲れがたまっていたのかふらっと座った駅のベンチで吸いこまれるみたいに眠りに落ちて、気がついたら膝のうえに掛けられていたのだ。

 そんな身元のあやしいものを、怪しむよりも素直に好意と受けとってしまうのは見ようによってはガードが甘いってお叱りを受けそうなもんだけれど、そういうところは士郎はじつにおおらかなのだ。


 どんなひとなんだろう、これをくれたのは。

 はしっこの方、すこしすりきれているところに触れると士郎の胸はどきんと跳ねた。

 もしそのひとを見つけられたら。

 それはもう運命にちがいないと士郎は少年みたいにわくわくしていた。


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