12月10日(日) 士郎


 金曜の婚活パーティで会ったうちのひとりとどうにかデートの約束までこぎつけたのは士郎しろうにとっては出来過ぎで、たぶんけいの手腕によるところがおおきかったんだろうと思う。

 圭はうまいこと士郎を乗せて、おかげで士郎はいつになく女性のまえで構えずしゃべることができた。


 そこまではよかった。でもそのさきのデートでは、圭の助けは得られない。


 アパートに戻ってきた士郎はふうっとおおきく息を吐いた。緊張から解放されてほっと安心、のためいき。それと落胆のためいき。

 たぶんきょうの子と二度めのデートはない。士郎はかちんこちんに緊張して笑顔ひとつつくれなくって、むしろ睨むぐらいのいきおいでこれじゃあおどすためにデートしてるみたいだって思いながらもさいごまで空気を変えられなかった。怯えさせてしまってごめんと心で謝って、逃げるように背を向けたのだった。


 律儀に圭に、きょうの報告の電話をかけたらすぐに出た。

「どうだった?」

 とたずねる声が期待に満ちているから、おもわずたじろいでしまう。

 デートの不首尾を語りながら見まわすと女っ気のかけらもない殺風景な部屋のすみに、ダンベルがふたつ転がっている。不安なんてまるでなかった学生時代の形見みたいだ。


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