まいりました。


古代、奈良時代のひとびとの暮らし、恋物語を中心としてとても素敵なおはなしを紡がれ続ける作者さま。
たぶん、その全部を拝読させていただいたと思っています。
その上で。

まいりました。

わたしはたしかに、こうした時代の息吹きのようなものが好きです。風景を置いていただけるだけで、当時の空気を感じるだけで、ぽろぽろ泣いてしまいます。

本作もそのつもりで読み始めさせていただきました。
そうしてもちろん、その要素はある。
美しい情景、当時の暮らしぶりの丁寧な描き出し。
あるいは、時代ならではの事柄、つまり身分制度なり戦争なり、あるいは疫病に対する脆弱なり、そういったこともしっかり物語を支える要素として組み込まれています。
だからわたしは、そこでもう、満足なのです。

なのに。
そんな予想を超えて、そんな期待を超えて。

表現がみつからない。
だから、不遜な言い方となります。ご容赦ください。

本作は、ほんもののエンターテイメントでした。

核は、ラブコメ。
強く、ときにおっかない、そうして凄まじいほどの美貌のヒロイン。かたや、とある事情から女性を苦手とする、最強のヒーロー。ファンタジーでひんぱんに登場する身代わり要素あり、片恋あり、両恋となってからのじれじれもあまあまも、もう、しっかりと。

加えて、戦闘描写がほんとうにわかりやすい本格的なアクションシーン、あるいはこれも時代ならではの先住民族とのかかわりも描写されます。登場人物どうしの、作者さま一流のコミカルなやりとりもあり、さらになんとも可愛い幕間のお手紙コーナーなどもあり、おまけにこのお手紙が……。

もう、なにをあげれば良いのか分かりません。
楽しくて、どきどきして、笑えて、泣けて、もうもう、最高で。
そうしてぜんぶが、ひとつの物語としてしっかり、収まってる。

なんだろ。
うーん。

あはは。
やっぱり、まいりましたとしか言いようがないのだ。

ああ、楽しかった!!

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