いのちの場所。


主人公やちよは実家で酷い扱いを受け続け、ついには呪いの身代わりとなり命を捨てよと命じられて家を出ます。
長く続いた虐待により、心も身体もとうに限界を超えていたやちよ。
生きていること、命を繋ぐことを許されていないと、考えていたのです。
いや、自分の命はもうそこにはない、身体を捨ててこそ浮かばれるんだと、もう半ば彼岸に彼女は漂っていたのだと思います。

そんな彼女を変えたのが、かりそめの嫁ぎ先の縁のひとびと、そして誰よりも、呪いで命を限られているはずの旦那さま。

この人のために、と思った時から、やちよの心の色は変化したのです。
美しく消えかけていた半透明の魂が、もがき、身を捩り、あがき。
激しく燃焼するようになったのです。

穏やかな時間も、そして心臓が飛び出してしまいそうな冒険も。
ぜんぶの経験がやちよを変えてゆきました。

そうして最後に、掴んだ奇跡。

大正浪漫の香りのなか、きらきらと輝く宝石の光に包まれて。
稀有な読書体験をしてみませんか。

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