物語世界を、強制する。


本作は、2023年3月に結果発表された『最強に尊い!「推しメン」原案小説コンテスト』において大賞を受賞し、その後書籍化された作品となります。

ご発表から時間が経っており、また、コンテストで高い評価とともに大賞を獲得された本作に、いまさらどういうレビューをつけるのか、と、わたし自身も訝しんでおります。
愚かなりと、みずからを阿呆に観ずるものです。

ただ、それでも言わせていただきたい。
言わずに、おれない。

構成力、文章力、発想とネタの新規性、時流に乗ること。
すごいおはなし、と言われるための要件は、たくさんあるものだと了解しています。

本作ももちろん、例外ではありません。
『絵で闘う』という着想、動きと情景がまざまざ立ち上がる筆致、クセのある魅力的な登場人物たち。
前述の要件に照らして讃えるべき点がたくさんあり、講評においてもそうした言及がなされておりました。深くふかく、頷くところです。

だけど、わたしは、ちょっと違うと思う。
あはは、大賞受賞作で、選者さまの講評に歯向かおうとしていますね。

タイトル、皆さま、どう感じられますか。
わたしは初めて本作のタイトルに触れたとき、足、震えました。
やられた、と。
貫かれたと、感じました。

作者さまのコメントにもあるとおり、グラフィアトルは、造語だそうです。
その造語を、この内容の本作に持ってくる、その感性。

この作者さまは、持てるすべての道具を使って、その胸の内に展開した物語を強制してくる。世界を観ろ、感じろ、走れ、泣け、そうして、登場人物と同じ<絵>に、沈むといい。
そうやって強制された世界に、わたしたちはぼうぜんと、悦びをもって染まるしかないのです。

書きすぎました。
書籍もあれば、改稿前の受賞作もこうして拝読することが叶うのです。
さ、ほら。
開いて。