王道の恋愛小説。主役級はもちろんのこと、脇役たちも個性派ぞろい。

いろんな女性と男性が登場し、それぞれに惹かれ合ったり片思いを募らせたり、でも最後には結ばれるという、王道の恋愛小説なのですが、本作のきわめて特徴的なところは、時代が奈良時代であること! 奈良時代ですよ。なかなかそんな小説にはお目にかかれません。

現代と異なる社会的なしがらみや慣習はあれど、恋する若者たちがやきもきするのは今も昔もかわりません。

本作の主軸となるのは、東北地方で征夷軍の軍監を務める勇猛果敢な男、真比登(まひと)と、その地を治める豪族の娘、佐久良売(さくらめ)。真比登は子供時代にかかった病のために顔に醜い疱瘡(もがさ)持ち。家族愛に飢えた彼は自分の家族を作りたいという気持ちは人一倍強いのに、体に残された疱瘡のため恋愛からは逃げています。かたや佐久良売も、少女時代に繰り返し負わされた男性に対するトラウマのため、絶世の美女なれど婚期を逸し、ひとりで生きていく決意をしています。そんな訳ありの二人が縁談をすることとなり、ここから、えええっと驚くような展開がつぎからつぎへと繰り出されます。

恋愛あり、友情あり、家族愛あり、戦いあり、堂々の187話54万字です。奈良時代への深い造詣に裏打ちされた加須 千花ワールドをたっぷり堪能できます。また、本作のすごいのは、本文からリンクで見ることのできる挿し絵が豊富にあること! これを眺めていくだけでもとても楽しいですよ!

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