「取り扱い要注意」
- ★★★ Excellent!!!
かなり高レベルな進学校の生徒会に所属する三人の登場人物たち。書記の八尋環季さん、副会長の金澤司くん、そして会長の白倉莉子さん。彼らは役員である前に人生の岐路に立つ高校生です。
主人公の八尋さんはコミュ障を自認する秀才で、自宅学習のお供はラジオ。夜九時にお気に入りの番組『エルミタージュ』が始まれば、盤石の世界の扉が開き、司会者の軽妙なトークに包まれながら勉強に打ち込む日々に満足していました。
コミュ障とはいえ、超がつく秀才の彼女です。生徒会長の白倉さんから強引にスカウトされた生徒会書記の仕事だって、彼女にかかれば赤子の手をひねるよりも簡単なもの。それどころか、それって生徒会の仕事? な、生徒指導にまで引きずり出されてしまいます。そして彼女の不器用な体当たりが、数人の生徒の心を揺さぶっていきます。
コミュ障で臆病な八尋さんですが、たぎるものを心の奥の奥に隠していました。次第にそれを表に出せるようになっていきます。八尋さんを巧みに導いたのが生徒会長の白倉さんであり、結果的に金澤くんでもあります。三人は互いの存在に刺激を受けながら、いい加減に高校生活を送った私にはまぶしくて見とられんわ、と叫びたくなるような充実したときを過ごしていくのです。三者三様の成長過程がとにかく気持ちよいです。もう、みんな全力投球でおおまじめ!
大学の合格発表の日を迎えた八尋さんは、いまや、自分の感情のままに泣くことができます。自分の心をきちんと理解し、制御できるようになったからこその涙です。何の涙なのかは、ぜひお読みいただき、一緒に泣いてください。この素直な涙に、成長したなあと、巣立つ子供の後ろ姿を見守る親の気持ちを疑似体験させられたのでした。
ああ、なんだかつまらない要約になっちゃいました。本作はもっとずっと理屈っぽくて、もっとはるかに暑苦しくって、気づいたら読み手の心の柔らかいところまで染みとおっている、良い意味で過激な作品です。