18本目 絶体絶命をキャンセルッ! 【Ad.23】
魔王ワルプルギルスの限定解除――
早い話が封印の部分解除だ。解除レベルに応じ、封印されている魔力の一部を解放させる。その権限、《
解除レベル1の時点で、魔王の魔力はクジビキ
そしてワルプルギルスの特性は、無限遠の魔力量に応じた体積と形態変化。
クリスマス・イヴの市街地の公園に、巨大な球体の怪物が突如として出現していた。
大きさは五階建てのビルをもしのぐ。太く長い手足が二本ずつ生え、
「ニャーッハッハッハッ! なぁぁにが〝まだだ〟だ! バカじゃねーかとは思ってたが、本当にバカなんじゃねーかァァァ!?」
すぐ足もとにいたカデンがタマの助けを借りてヒイヒイあえぎながら逃げてくる。テルマのそばを通りすぎ、ぱなえとソーメの近くまで来て座りこんでいた。
「おー、狙いどおり邪魔者はいなくなったなあ、テルマぁ? で、こっからどーすんだぁ?
敷地内とは
学校を包む封印本体の範囲内にいれば、限定解除はものの十三秒で取り消される。
つまり逆に、学校の敷地の外にいれば、中まで押し戻されない限りワルプルは自由ということだ。たとえ、24時を過ぎれば全封印が解ける
「クジビキの時間切れまで残り三時間ってとこか? いまこの場にいる勇者モドキは行動不能。さすがにこんだけ目だちゃあ、ほかのも駆けつけるだろうが?
とがった
と、不意に視線をテルマから外し、倒れている千枝を囲むぱなえたちのほうを見た。
「ぱなえぇぇ、そういや借りがあったな?」
「ほぇ……?」
へたりこんで完全に放心しきっていたらしいぱなえの口から、ため息か返事かもわからないような声がもれる。その様子のなにが面白かったのか、ワルプルは「ニャヒヒッ」と笑って体を揺らすと、おもむろに片腕を振りあげた。
「勇者モドキも減らしとかねぇとなあ?
「えっ、ちょ、ワルプル様!?」
声はぱなえでなく、すぐ近くにいたカデンから。
「お、お待ちくださいっ! わたしたちもまだここにッ――」
「バイニャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッッッ!!」
悲鳴があがる
手ごたえありと、ワルプルはまた口の端を持ちあげかけ――しかし違和感に気づいた。
腕が地面に届いていない。なにかがすぐ下で押しとどめている。
ワルプルが少し腕を浮かせると、ピンク色の光がすき間からあふれてきた。
「ほーう?」
ぱなえだ。ぱなえが下でなにかやっている。
おそらくは反発魔術。物体による
だが――とワルプルはほくそ笑む。
試しに少し力を入れて押しこんでみた。想像どおり「うっぐぅぅっ!」と腕の下から
「ち……千枝さんッ、起きてください、まし……!」
途端につまらなくなり、ワルプルはより力を強めた。触媒が力を失うまで耐えさせて
血を吐くような声がすぐに聞こえ、ワルプルは
「や……ぎ……も、ぉ……限、界ぃッ……!」
「やれやれ」
魔術による抵抗が消えるその瞬間、気の抜けた声が聞こえた気がした。
それから、チリンと、金属質の小さな音も。
すべてすぐ地響きに変わり、気のせいだったような気もしたが。
直後、魔王は
「
「!?」
叩きつけた巨腕が跳ねあがる。
自分で持ちあげたのではない。はじき返されたッ!?
(やべぇッ!!)
魔力の波動を感じる。懐かしい赤い波動。
へたりこむ少女たちのあいだに、武骨な肉切り包丁じみた大剣を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます