くだらないことで二人暮らし中の妹と喧嘩をした俺はダンジョンの中に三日間家出した〜その間有名美少女配信者を助けたけどサイン貰うの忘れてた!〜
シャルねる
黒歴史確定な家出
家出をした。
理由? そんなの決まってる。妹が、うちの妹がおれの大事にしていたプリンを食べたからだよ!
……我ながら女々しい……と言うか、くだらない理由だとは思う。でも「もう家出してやる!」とか、もう23歳になると言うのに思春期のガキみたいなことを言って、家を出てきちまったんだよ。……金も食料も何も持たずに。
今頃妹は俺が手ぶらで出て行ったのを見て、どうせすぐに戻ってくるだろう、と思ってるはずだ。……だから、まだ戻らない。
金も食料も無くても、俺なら生きられる場所があるからだ。
そう、ダンジョンだよ。
普通、ダンジョンで寝泊まりするやつなんて、居ない。当たり前だ。ダンジョンには魔物がいる。そんな魔物はいつでも襲ってくる。眠ってたりなんかしたら、当然絶好のチャンスとばかりに襲ってくる。
だから、普通ならそんな馬鹿げたことをしようとも思わないんだろうが、俺はする。くだらないとは分かってるが、男の意地だ。
という訳でやって来たのは、俺の家から一番近いダンジョンだ。……危険度は知らん。
何度か潜ったことがあるけど、そんなに危険な魔物はいなかったし、まぁ大丈夫だろ。
食料になりそうな魔物もいるしな。
それに、よく分かんないけど、人も全く居ないんだよな。
「お邪魔しまーす!」
だからこんなに恥ずかしい大声を上げながらダンジョンに入っても、誰にも聞かれることはないんだよ。
そうやってダンジョンに入って、スマホ持ってきたら良かったなぁ……と思い始めたところで、なんかデカい斧を持った二足歩行の牛? みたいなやつが現れた。
「んー……お前、絶対食べられないよな」
見るからに肉が硬そうで、不味そうだ。
「パーンチっ!」
食えそうにないと思った俺は、適当にそいつのことを殴り飛ばした。
「じゃ、この斧は貰ってくな」
いやー、どうやって倒した魔物の肉を捌こうかと思ってたんだけど、これである程度はできるだろう。多分だけど。
この斧、血の跡とかついてないし、多分、まだ何も殺してないと思うから、綺麗なはずだ。……一応、後で洗うつもりだけどな。
魔物の死体は何もしなかったら、ダンジョンの中なら勝手に消える。
だから俺は二足歩行の牛みたいなやつを置いたまま、斧を肩に担ぎながら歩き出した。
「取り敢えず、三層目辺りを目指そう。泊まるんだとしたら、そこが最適なはずだ」
その後も何体か食えそうにない魔物が現れたけど、適当にぶん殴って倒した。
そして、二層目にやって来た。
「キャァァァァァァ」
その瞬間、そんな声が聞こえてきた。
……びっくりした。……と言うか、ここ、人間いるんだな。初めて見た……いや、まだ見てないから、初めて声を聞いた、だな。
「って、こんな呑気なこと考えてる場合じゃねぇだろ!」
初めての人の声に感動してたけど、明らかに悲鳴だっただろあれ!
そう理解した俺は、すぐに地面を蹴って走り出した。
すると、赤黒い皮膚の角の生えた何か……いや、鬼? か? ……鬼に頭を掴まれそうになっている女の子の姿が見えてきた。
一応、助けが必要かを聞こうと思ってたんだが、これはそんなことを聞いてる暇がないと思って、俺は更に加速した。
そしてそのまま、思いっきりぶん殴った。
「あの、大丈ーーッ」
待った。あれ? 綺麗な黒髪に黒い瞳……日本人ならそんな特徴はどこにでもいる普通の特徴だけど、この人、あれじゃね? 有名美少女配信者の
「ぇ……ぁ、え?」
「あの、もしかして甘味ちゃ……さん、ですか?」
「わ、私……あ、は、はい! そう、です……あっ、た、助けてくれて、ありがとうございます!」
最初は困惑した様子だったけど、徐々に状況を理解していったのか、立ち上がって、お礼を言いながら頭を下げてきた。
「あ、いや、か、顔、上げてください。お、俺はただ家出をしてきただけで……」
「え? 家出……? このダンジョンに、ですか?」
あっ、やべ。……もう成人もしてるのに恥ずかしげもなく家出をしただなんて言っちまった。
「ま、まぁ、はい。ここなら食料も確保できますし、一番家から近かったんで」
「で、でも、ここーー」
「そ、それじゃあ俺は失礼します!」
こんな美少女にこれ以上俺の黒歴史になるであろうこの出来事を知られるのは羞恥心が凄くて、逃げるようにそう言ってその場から走り出した。
三層を目指して。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます