初めての

Side:七瀬甘味


 初めて危険度SSランクのダンジョンに挑戦をすることにした。

 もう危険度Sランクのダンジョンは結構余裕でクリアできるようになってたし、危険度SSランクのダンジョンも苦戦はするだろうけど、なんだかんだクリアできると思っていた。

 

 配信に人を写しちゃってトラブルになる可能性を考慮して、難易度がちょっと高めの危険度SSランクのダンジョンに向かった。

 そして、こんなところにどれだけお金を払ったとしてもカメラマンで着いてきてくれる人はいないから、お高いドローンを使って配信を始めた。


「や、やっほー、七瀬甘味だよー?」


 配信を始めたての頃の挨拶なんて変な挨拶ばっかりだと思う。だから、そんな挨拶をずっと使ってる人なんてほとんど私以外には見たことないけど、私はずっと使い続けている。

 初心を忘れないようにするためにね。……まぁ、危険度SSランクのダンジョンなんかに来てる時点で、初心は忘れてるのかもしれないけど、あくまで私が初心を忘れたくないのは配信者としてだし、全然大丈夫。


 そう思いながらも、警戒を緩めることなく私はダンジョンの一層目を進んだ。

 流石に行けると思っていても緊張しているのか、自分でも分かるくらいに口数が少ないのが分かる。

 

「ッ、ミノタウロス」


 二足歩行の牛のような魔物、ミノタウロスが私を見下すように目の前に現れ、私は呟くようにその名前を配信に聞こえるように言った。

 大丈夫。武器も持ってないし、落ち着いていけば倒せる。

 そう思った私は、一度深呼吸をして、持っていた槍を構えた。

 



「はぁ、はぁ、はぁ……」


 勝った。

 念の為ちゃんとミノタウロスにとどめを刺した私は、息を整えながら周りを警戒して、コメント欄に目を通した。

 今日はダンジョンを警戒しすぎて、全然コメントとか見れてなかったから、少しは見ておかないとと思って。


【凄っ!】

【ミノタウロスを18歳で単独10分討伐とか凄すぎでしょ】

【可愛い】


 すると、そこには私を褒めてくれるコメントや、全然関係の無いコメントが流れていた。

 ……私、10分で倒してたんだ。感覚的に、もっと長いのかと思ってた。




「よし、休憩はこれくらいにして、二層目を目指して歩き出そっかな」


 自分に気合を入れるためにもそう言って、私は言葉通り休憩をやめて進み出した。

 そして、その頃にはミノタウロスの死体が消えていたから忘れていたけど、そういえば私、素材取ってないじゃん。

 ……はぁ。後悔しても、仕方ないか。


 そして、そんな後悔を乗り越えて運良く……いや、配信的には悪いのかもしれないけど、とにかく運良く、あのミノタウロス以外には魔物に出会うことなく、二層目にたどり着くことが出来た。


「えーと、目標だった二層目に来れたんだけど、まだミノタウロスにしか出会えてないから、もうちょっとだけ進んでみることにするね! 一応言っておくけど、三層目に行く予定は無いよ!」


 せっかく危険度SSランクのダンジョンに来たのに、魔物を一匹だけしか倒してないなんて、流石にどうかと思うしね。……まぁ、私が配信者じゃなかったら、これでいいのかもしれないけど、私は配信者なんだから、頑張らないと。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あとがき。

本当はもっと書くつもりだったんですけど、途中で寝落ちしてしまっていたので今日はここまでになってしまいました。申し訳ありません。

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