そもそも返信が来るかすら分からないんだし、別にいいか
紫永に水を持ってきてもらって、一息ついた俺は風呂に入ることにした。
どうせ直ぐに返信は来ないんだから、スマホの前で無駄に緊張するのも時間の無駄だと思うし。
「あ、じゃあ、お兄ちゃんにYのアカウントのログインパスワード送っとくね」
そう思いながら、紫永に思ったことをそのまま言って風呂に入ることを伝えると、そう言って紫永との連絡くらいでしか使えていない俺のスマホにログインパスワードというものを送ってきた。流石俺の妹と言うべきか、ちゃんとYのアカウントログインの仕方が載っているURLと一緒に。
「ありがとな。後でログインしとくよ」
「うん」
紫永が頷いてくれたのを確認した俺は、着替えを持って風呂場に向かって『焔』でお湯を沸かした。
「は〜、さっぱりした」
風呂から上がった俺は、思わずそんなことを口走っていた。
精神的以外にはあんまり疲れてなかったし、汗もあんまりかく体質じゃないけど、やっぱり風呂に入るとさっぱりするな。
そして、体を拭いた俺はスッキリした気分でリビングに戻った。
すると、紫永はもうリビングには居なかった。
多分、自分の部屋に戻ったんだろうな。……ちなみになんだが、紫永の部屋はあるけど、俺の部屋は無い。まぁ、紫永の部屋も元はどっか行った親の部屋だったし、俺の部屋が無いのは仕方ないよな。
紫永を先置いて俺の部屋なんて要らないし。
改めてそう思いながらも、俺はさっき紫永に送ってもらったURLを開きながら、Yのアカウントを開いた。
すると、その瞬間、とんでもない勢いで色々な通知がやってきた。
「いや、なにこれ? と言うか、うるさ。壊れたか?」
紫永に聞く……のは部屋に戻って行ったばっかだろうし申し訳ないな。
「あ、充電切れた」
どうしようかと悩んでいると、結構あったはずなのに、一瞬で充電が無くなっていた。
……どうせまだ甘味ちゃんからの返信は来ないんだし……いや、そもそも来るかすらも分からないんだし、別にいいか。
そう思った俺は、充電器にスマホを刺しながら、夜ご飯の時間まで適当に過ごした。
「……お兄ちゃん?」
そして、外もいい感じに暗くなってきた頃、俺は紫永の部屋の扉をノックした。
「ダンジョンで狩った魔物の素材を売りに行くんだが、一緒に来ないか? 売った金で帰りにラーメンでも食べよう」
「うんっ。一緒に行く!」
明後日は紫永のお小遣いの日だし、この前の魔物をさっさと売って金にしときたいと思った俺は、紫永にそう聞いた。
すると、久しぶりの外食が嬉しいのか、ラーメンが嬉しいのかは分からないが、紫永は笑顔でそう言ってくれた。
「私は着替えるから、ちょっと待っててね。……覗いちゃダメだよ?」
「覗くわけないだろ」
「えへへ、そう?」
「待ってるから、さっさと着替えて来い」
「うん」
そんな適当なやり取りをしてから、俺は紫永を待つ為にリビングに戻った。
……今更だけど、ラーメン屋に行くなら風呂、入らない方が良かったかもな。……まぁ、俺から誘ったんだし、別にいいけどさ。
「お待たせ、お兄ちゃん。……そういえばなんだけどさ、まだ甘味さんからの返信は来てないの?」
「そりゃ来てないだろ」
あんな有名な配信者なんだ。まだ見てすらないだろ。
そう思って、俺はそう言った。
「……ちゃんと確認した?」
「いや、一応確認しようと思ったんだが、通知がやばくて、充電が切れたんだよ。……壊れてないよな?」
「あー、壊れては無いと思うけど、通知、大事な人の以外は切っておかないと」
そういうことが出来るのか。
つまり俺の場合は甘味ちゃん以外の通知を切ればいいと。
「まぁ、また明日にでもしておくよ」
「……うん。……一応、もう一回私のスマホでアカウントを開いて、確認する?」
俺がそう言うと、紫永は心配そうにそう言ってくれた。
ただ、どうせ返信なんてまだ来てないし、俺は首を横に振った。
「わざわざありがとな。でも、大丈夫だ。それより、もう夜も遅いんだし、さっさと行こう」
俺が守るつもりではあるが、紫永は客観的に見ても絶対可愛いと思うし、あんまり遅くなりすぎるのも危ないから、俺はそう言った。
「……分かった。じゃあ、帰ったら私が確認しておくね?」
「別に大丈夫だぞ?」
「ううん。私が確認しておきたいから」
そこまで言うのなら、別にいいか。
そう思った俺は頷いて、紫永と一緒に家を出た。
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