こんなクソ動画がバズってるなんておかしいだろ!
「し、紫永? う、嘘、だよな? あれから二日も経ってるのに、紫永は何も言ってこなかったよな? だから、嘘だよな?」
俺は膝から崩れ落ちながら、紫永に向かってそう聞いた。
「え、えっと、本当、だよ? ほ、ほら、これ」
すると、紫永は言いずらそうにそう言って、俺にスマホの画面を見せてきた。
そこには一分くらいしかない俺のゴミみたいな動画が300万再生もされていた。
なんでこんなクソ動画が300万再生もされてるんだよ! おかしいだろ! もはや嫌がらせだろ!
「……紫永が300万回再生した、とかだったり、しませんか?」
「……お兄ちゃんは私が同じ動画を……しかも私たちが投稿した動画を300万回も再生したと思う?」
「……思いません」
取り敢えず、どうやって死のうかな。
もう、生きていられない。一つならまだしも、二つもこんな黒歴史が全世界に公開されているなんて……
「だ、大丈夫? お兄ちゃん」
「……大丈夫じゃない」
大丈夫では無いけど、やっぱり死ぬのはダメだな。
紫永がいるんだ。……全部大人気ない俺の自業自得なんだし、ちゃんと受け入れて、絶望しよう。
「大丈夫じゃないけど、もう、大丈夫だ。ありがとな、紫永」
「う、うん。無理は、しないでね?」
紫永が心配そうにそう言ってくる。
俺はそんな紫永の言葉に頷きながら、崩れ落ちていた体に力を入れて、その場を立った。
そして、椅子に座り直した。
「大丈夫なんだったら、配信、いつにする?」
「配信?」
「うん。忘れたの? お兄ちゃん。あの動画で、ダンジョン配信とかやっていきたいって言ってたじゃん。ほら、見てよこれ。もうチャンネル登録者が20万人もいるんだよ? こんなにいっぱいの人が期待してくれてるんだから、やらないと勿体ないよ!」
は? あの動画が300万再生を超えてるのも意味わからなかったけど、あの動画でチャンネル登録者が20万人も増えてるのは更に訳が分からないんだけど。
「いや、でも……」
「はいこれ。買ってきたんだ」
俺が何とかこれ以上黒歴史を増やさないように、配信をしなくてもいい理由を捻り出そうとしていると、紫永はカメラの着いたドローンを俺に見せてきながら、そう言ってきた。
……これ、絶対高いやつ、だよな。……割とマジで今まで俺が紫永に上げたお小遣い全部使ってるんじゃないのか? ……あれ、配信をしないなんて言えなくね?
「お兄ちゃんが配信頑張って、ちゃんと返してね?」
「ま、まぁ……成功、したらな」
「うんっ」
頑張るしかないじゃないかよ。こんなの。
……まぁ、仮に成功しなくても、金はちゃんと返すつもりだがな。
「……じゃあ、三日後。三日後に、いつものダンジョンで配信、してみようかな」
「うん。それで大丈夫だと思うよ」
憂鬱だ。
もう逃げられないとはいえ、本当に、憂鬱だ。
それでも、紫永がなんか嬉しそうだし、頑張るんだけどさ。
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