第17話
美咲の隣りに立たされていた佐々木の胸から突然、槍の様な毒針が飛び出した。
空中で、毒が迸る。
強力な毒を注入される事なく、佐々木は即死した。
最も怖れていた相手が、現れた。
スズメバチである。
大きさが、スクーター程もあるその姿は、最も出会いたくない相手だった。
「伏せろ」
宮ノ森の指示に素早く従う。
棒立ちの迷彩服たちを次々と襲っていったスズメバチ。
即死出来なかった迷彩服の男たちが、苦し紛れにまき散らした弾丸に、中山が犠牲になった。
スズメバチに対して、伏せれば助かるというものではないが、少なくとも襲われる順番は、後回しになる。
迷彩服の男たちが運ばれている隙に、上からの攻撃の邪魔になる庇状の岩の陰に全員で、転がり込む。
「佐々木くんが、最初に襲われるとは、中山さんまで……」
誰が襲われても仕方のない状況だったが、宮ノ森は悔しそうだった。
野中は、迷彩服の男たちが、持っていた銃を拾う。
「珍しい銃ですね。狙撃用です。対象は、おそらく私ですね」
これなら、トラブルが起きにくいと、外に向けて構えた。
スズメバチ達は、佐々木や迷彩服の連中を簡単に運び去った。
彼らを幼虫の餌にするのだろう。
数匹が、私たちを探して飛んでいた。
夜明けまでは、二時間もある。
大きな音と共に、野中は銃弾を一匹に命中させた。
落下したハチをもう一匹が、運び去る。
残りのスズメバチは、五匹だ。
磯の香りがきつい。
ここまで来ると酸素濃度は、少し下がる。
「銃は、大丈夫そうです」
しかし、五匹が、一斉にこちらに向かって飛んできた。
「先頭を」
野中が、狙う。
しかし、その時、大きな黒い影がハチと私たちの間に割って入った。
先程のカブトムシだ。
スズメバチは、カブトムシを恐れない。
その顎で噛みつこうとする。
しかし、大型化したカブトムシは、スズメバチを攻撃しようとしてその
ハチは、カブトムシへの唯一有効な攻撃目標である脚を狙えない。
近づき過ぎたスズメバチが一匹、角に挟まれた。
一瞬で、動けなくなった様子を見て、明らかにハチの動きは乱れた。
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