第5話

「光合成と同じ変化をたどるんだ。その後、電気エネルギーに変換するシステムを付加した」


 宮ノ森は、この島で実験している、大気発電の説明を美咲にしている。

 空の色がくすんでいる理由は、酸素濃度が高いからと説明を受けた。


「大気中の二酸化炭素を使用。炭素固定する。その時、酸素を生み出す。さらに、数種類のナノマシンの組み合わせで電気的勾配を作る」


 そうなんだと、美咲はうなずいた。


 でも、私は理系女子ではないの。

 難しい事は、理解出来ない。

 でも、私は文系女子でもない。

 私は、失恋系女子。

 あなたの作った恋の迷路。

 出口を見失ったままの女の子。

 

 美咲の心は、またもあの頃へ旅立ってしまった。


 背の高い草と蔓に巻かれた巨木の間に申し訳程度に作られた小道を歩いていく。

 虫の鳴き声が大きく聞こえ、うるさいくらいだ。

 続く下り坂を二十分も歩くと、小さなコンクリートの建物が見えてきた。

 3Dプリンターを使ったらしい。


 建物は、3つ。


 最も大きなものが、生活棟。

 次に、研究棟。

 最も小さく背の高い物が、ナノマシンの施設だ。

 全てが、コンクリートの通路で繋がっていて、外界から、遮断されている。

 あの中には、空調が完備されていて、快適な空間が美咲を待っている。


 疲れた足が、再び元気を取り戻した。


 




 

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