第6話

 光友から二人。

 佐々木と下川という社員が、この施設には絶えず詰めている。

 実験のデーターを管理と所員の健康維持を担当している。

 下川のり子は、重工の受付けだったが、辞めて看護師の資格を取った、少し変わり者。

 現在は、光友系列の病院で勤務。

 受付けの頃の美貌は衰えず、文字通り白衣の天使だ。

 そして、宮ノ森のファンだそうだ。

 一緒に仕事が出来ることを喜んでいると言った。


 さらに、宮ノ森のファンなのが佐々木裕二だ。

 重工の技術者である彼は、今回の実験に自ら手をあげ、協力している。


 住居棟、実験棟共に外界から完全遮断。

 もちろんエアコンも完備。

 ここにいる限り、たしかに快適である。


 大気発電は、簡単に言うと、二酸化炭素を固定、酸素の発生を伴う反応の中でナノマシン間に少量の電気的な勾配をつくる。

 ナノマシンを回収して、電気を取り出す。


「回収するところが、欠点だな。施設が必要であるということになる」


 ナノマシンを回収する建屋は、背が高く、文字通り回収塔だ。

 現状のシステムでは、微小単位のナノマシンの回収装置には、精密機器が必要。

 宮ノ森は、この部分が気に入らない様だ。


「各家庭で、電源を入れると、浮遊状態のナノマシンから、直接送電するというのが理想だろう」


「つまり、送電線はなくなるのね」


 美咲の質問に、宮ノ森が答える。


「そうなるね。マイクロウェーブによる送電も実験中だ。しかし、これは兵器転用も可能になってしまう。馬鹿な国が嗅ぎつけなければよいが」


 佐々木の関心の比重は、発電所の無い発電に大きく傾いている。

 兵器転用に関しては、ナノマシンを集中させると、マイクロウェーブは高出力になり、電子機器に対して、破壊的に働くと、美咲に説明した。


 人に対しても……。

 佐々木が、付け加えた。


「島の規模程度の物なら、恋愛時のドキドキ感くらいなら、与えられるかも知れません」


『使えないかしら』


 美咲は、宙ぶらりんの初恋を見つめた。




 

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