第4話

 その島周辺の海は、港よりもさらに、透明感を増していた。


 小さな砂浜の白い砂は、どこまでも白く、関東の火山灰の砂しか知らない美咲の目には、新鮮に映った。

 ただ、島の空は、ふたりの昔を懐かしむようなセピアカラーだった。


 あの頃のふたりは……。


「バカバカしい。今は、仕事できている。余計な事は、考えない様にしよう」


 美咲は、仕事モードに、心を切り替えた。


 島の形状は、すり鉢状だった。

 宮ノ森の選定らしい。


 運転担当の野中は、船を島の洞窟に着けた。

 洞窟から、一歩外に出ると夏の陽射しが肌を焼き、おもいでを蒸発させた。


「島の中央に、研究棟と住居棟がある。そこは快適なはずだから、頑張って歩こうか」


 宮ノ森は、以前と変わらず元気だ。

 自然の中が、好きだと言っていた記憶がある。


「すみませんね。クルマもこの通り入っては行けなくて」


 日に焼けた笑顔と半袖のたくましい腕が、印象的な野中英雄は、自衛隊にいたそうだ。


 身長は、宮ノ森よりやや小さい。

 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る