第18話
ハチミツへの感謝か、宮ノ森への感謝かは、わからない。
とにかく、カブトムシに助けられた。
スズメバチが、去った事を確認すると残りのハチミツのボトルをカブトムシに投げ与えて、走った。
美咲たちは、入江の洞窟にたどり着いた。
洞窟の入口には、数匹の大型昆虫が、死んでいた。
酸素を取り込めず、動けなくなったらしい。
「ここの酸素濃度は、正常。少なくとも大型昆虫は生きていけない」
洞窟内には、アメリカンスタイルの大型バイク程のカマキリの死体があった。
酸素濃度の低さに、生命を維持出来なかったのだろう。
水辺へと向く、その頭は動かなかったが、よく観察すると、腹部が動いている。
もちろん、C国スパイもいる。
遠慮の無い銃弾が、近くの岩を削る。
撃ち合いといっても、こちらは野中のみが撃っている。残弾も残り少ない。
撃ち合いながら、広い洞窟をお互いグルッと回り込む。
カマキリの死体を盾にするC国の生き残り工作員の3人の方が、やはり有利だ。
不利な状況に、宮ノ森が野中に標的を指示をした。
一瞬の躊躇があったが、野中はカマキリの腹部を撃ち抜く。
銃弾の穴から数匹のヘビの様な物が爆発したように、腹部から飛び出した。
組織の三人の身体に吸い付くと、そのまま身体の中に侵入していった。
「寄生虫だ。死んだ宿主から、出ていこうとしていたのだろう。カマキリの腹が動いていた。宿主が大型化して、環境の変化に突然変異したのだろうな」
「彼らは?」
体内に侵入され苦しむ彼らを見下ろし、野中が訊いた。
「良くて溺死。変異の現れ方によっては、もっと悲惨な運命だろう。殺してやった方が良いかもしれない」
良くても寄生虫の乗り物に変わり果てた彼らは、見知らぬ土地で、彼ら自身の弾丸でその生の時間を終えた。
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