第14話
「逃げよう」
相変わらず、単純明快な宮ノ森の意見だ。
「戦うなら、対昆虫、対兵士の両方に効果的な武器を作る必要がある。しかも武器なんて使った事の無い人間がほとんど。野中くんは、銃くらい撃った事があるのだろうが、僕たちには扱えない。人を撃つ事も多分出来ない」
野中は、頷く。
「博士。火炎放射器。作れますか?あれなら素人でも……」
高濃度の酸素下の火炎放射器。
「現実的でない。急造の火炎放射器なんて高濃度の酸素下では、それ自体が爆発する。確か銃も火薬だったな。それなら酸素を出来るだけ増やせば自爆してくれるかな?分からないが、やってみるか」
発電量を増やす。
フル稼働するナノマシンが、ぼんやり光る。
酸素は、毒である。
高濃度の酸素は、毒である事は、良く知られている。
これで、彼らの動きは、鈍くなるだろうか?
虫の方の動きは、予想出来ない。
モニターの中、クモの糸に捕らえられた男の様に、おそらく悲惨な場面が、繰り返されるだけだろう。
「洞窟へ逃げよう」
すり鉢状のこの島には、小さな川が2つあった。
建屋の出入口は、川の方を向いている。
なだらかな傾斜のその川は、全て海に注ぎ込み、その流れは緩やかだ。
この島の豊かな自然は、この豊富な水に支えられている。
小高い山に囲まれたこの島の唯一の切れ目が、小さな川の河口だ。
彼らもそこから上がって来たのだろう
「多人数なら、最も大きな南の川から上陸するしかない、他は彼らがいたとしても、手薄だ」
結局、武器らしいものは、野中の持つサバイバルナイフだけ。
あの巨大なトンボに対して、なんとも心許無い装備。
宮ノ森が、ハチミツのボトルを数本、バッグに詰めた。
それだけを持って、高速船の待つ洞窟へ出発した。
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