第16話
テコで簡単に起こせたカブトムシは、しかし、動かなかった。
「致命的な部分でも打ったのかしら?派手に引っくり返ったからね」
「いや、お腹が空いているのだろう」
宮ノ森は、折れた樹が、流していた樹液を落ちていた枝ですくうと、カブトムシの口元に近づけた。
美咲は、良い気分ではなかった。
当然だ。
先ほど同じような甲虫に、人の胴体が二分されるところを見たばかりだ。
ブラシの様な舌が、樹液を舐め取る。
さすがに体のサイズに、その樹液の容量では、足りないだろう。
宮ノ森が、バックパックから蜂蜜を取り出し、一本丸ごと与えていた。
「本当は、このためでは無かったのだが」
蜂蜜を舐め続けるカブトムシを後に、入江までの道のりを急いだ。
しかし、この小さな道にも組織の連中が数名待ち伏せていた。
野中だけなら、おそらく突破出来たろうが、残りは素人だ。
全員が、簡単に捕まった。
やたらに、キンキン声で、分からない言葉を話す彼らに、銃で促されて入江に向かう。
宮ノ森は、冷静に何かを待ってる。
そして、その時が、来た。
ブン!
空が、鳴いた。
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