第11話

「酸素濃度は、神の手らしい」


 宮ノ森は、高橋の頭部をチラッと見ると、話を続けた。

 ずいぶん長い時間が経過してから、事態の把握をみんなで始めた。


「正直言って、この事態は、全く想定していなかった。酸素濃度が、高くなるのだから、害虫の活性が高くなり、農家に被害が及んではいけないと思い、この島で実験後の観察をしていたのだが。まさか昆虫自体が、巨大化するとは」


「何故、巨大化したのです?」


 野中は、しつこく喰い下がった。


「昆虫の遺伝子に、酸素濃度に応じた大きさになると、最初から書き込まれていたのだろう。ここでは実験だからな。実際の運用時よりは酸素濃度を高くしている。直送電の実験も同時に行っていたしね」


 相変わらず落ち着き、自体を分析している宮ノ森の冷静さに、美咲は苛立った。


「人が、二人も死んでいるのよ。こんなところ今すぐに逃げ出しましょう」


 窓の側にたった宮ノ森の顔が、夕日で赤く染まる。


「無理だな、夜が来る。彼らのほとんどが、夜行性だ」



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