第7話



 写真館のアルバイトを始めて、二週間ほど経った。基本的な業務に少しずつ慣れてきた、と思う。今日の業務が終わり、閉店作業をしていると佐藤さんから明日の予定を聞かされた。




「出張撮影、ですか?」



 この写真館に来て、初めての仕事に少し戸惑う。佐藤さんは頷き、説明を始めた。



「ちょうどこの時期、春の過ごしやすい季節や紅葉の時期が多いかな。お子さんや家族との自然な写真を撮って欲しいって依頼が殆どだよ。」


 そして、明日の出張撮影では町内の大きな公園で遊んでいるお子さんの撮影をして欲しい、という依頼らしい。



「分かりました。」


「宜しくね。明日は、お弁当持って来なくて良いよ。出張撮影が午前中だから、近くで食べて帰ろう?」


 勿論奢るからさ、と爽やかな笑顔を見せられ、私は言葉に詰まってしまう。いくら貯金があるからって、無駄遣いするのは憚られ、節約生活をしている私だが、美味しいものが大好きで、佐藤さんが時折持って来てくれるお菓子や軽食に目が無いことがバレている。


 この微妙な関係の相手との食事は気が進まないが、それ以上に美味しいものを食べたい気持ちが勝ってしまう。



「お、お願いします……。その代わり、という訳ではないんですけど……。」



 明日の仕事への私からの提案を、最初はキョトンとして聞いていた佐藤さんだが、聞き終わると笑顔で頷いてくれた。




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