第6話
あっという間に時間が過ぎ、閉店時間となる。佐藤さんと二人で閉店作業に取りかかる。
「梨奈ちゃんが来てくれて、助かったよ。ありがとう。」
佐藤さんは眩しい笑顔でそう言うと、頭を下げた。今日は予約の電話を受けたり、お客様の対応をしたり、少し緊張もしたが、滞りなく出来ていたと思う。事務作業も、保育園でしていたものと難易度はそう変わらない。
「い、いえ。」
「……明日からも来てくれる?」
「へ?」
私の様子を窺うような瞳で、不安そうに佐藤さんは尋ねた。
「昨日言ったことも本気で思っているし、こうやってバイトに来てくれるのもすごく嬉しいんだ。だけど、梨奈ちゃんからしたら嫌になってないかな、と思って……。」
「えーっと……昨日の話は何とも言えないのですが……バイトは頑張らせてください。」
不安そうな言葉に、しどろもどろになって答えると、佐藤さんは晴れやかに笑った。
「良かった。」
この人は、私に暖かさをくれるけれど、それが私の心に、じわり、と薄暗いものを生み出してくる。そして、それは、この人と会ったばかりだからとか、少し変わったアプローチをされたから、とか、そんな理由からだけではない。
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