第5話




 カウンターの奥に案内される。バックヤードのような場所があり、そこに机が二台並んでいる。机の上にはそれぞれパソコンが置かれていた。




「こっちが梨奈ちゃんの机ね。」



 指差された机は綺麗に整頓されている。暖かく迎えようとしてくれていることが感じられ、緊張が緩む。




「梨奈ちゃん。まず簡単なところから教えていくね。」


「お願いします。」




 写真館は通常10時半から、17時まで開いている。季節行事の時期は開店時間を長くしているようだ。私は週4日勤務予定で、10時に出勤し、17時半に退勤する。朝出勤したら掃除をする。メイクや貸衣裳の着付けが必要な時は、いくつか契約している美容院があるらしく、そちらにお願いしているようだ。



「……着物用は難しいですが、子ども用の簡単なヘアアレンジは出来ると思います。」


 保育園では、子ども達の髪の毛を結び直すこともあった。苦手意識のある先生もいたけれど、私は結構得意な方だった。



「それは助かるよ。日常の記念写真なんかはメイクは必要ないけれど、ヘアアレンジできたら喜ばれるからね。」


 そう言って佐藤さんは笑った。その後、お客様が来られた時の対応や、簡単な事務作業、電話の受付方法などを教わる。



「ここまで、大丈夫かな?」


「はい、大丈夫だと思います。」


「良かった。何かあればいつでも聞いてね。」



 私は早速事務作業に取り掛かる。特に難しいものは無く、スムーズに進んでいく。時折、佐藤さんが声を掛けてくれ、その度にいつも優しく笑ってくれるのに、私は、ぎこちなくしか笑えない。



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