第22話
一週間ほど休業していた写真館も、元通り再開することとなった。撮影の予約は、量を調整して少しずつ受けている状況だが、少しぎこちないながらも動いている佐藤さんの姿を見れば、元の日常が戻ってきたのだとホッとする。
佐藤さんの日用品の買い物はまだ私が代わりに行っている。佐藤さんは恐縮しきりだったが「私が腰をやられた時は助けて下さいね。」と伝えれば、嬉しそうに頬を綻ばせて頷いた。
受けている予約が少ないこともあり、写真館はいつも以上にゆっくりした雰囲気が漂っている。これまでは通常業務しか触れていなかったが、少しずつ販売しているカメラやレンズ、フィルムのことを教わる。
逆に私からもこの三か月働いてきて考えていたこと、全国展開している写真館にあるようなスマホやPCデータの写真印刷サービスを提案する。大手企業との差別化は必要だけど、ここは地元の人たちが多く利用している場所だ。スマホやPCの操作を苦手としているおじいちゃんおばあちゃんを助けられるサービスがあった方が良いんじゃないかと前々から思っていた。
また、保育士の得意分野、壁面飾り……という程ではないけれど、店内の掲示物もお店の雰囲気は壊さない範囲で、だけどより良いものをいくつか考えたいとお願いした。それなら私の特技を生かせるという打算も入っている。
「梨奈ちゃん……。この写真館は梨奈ちゃんが居なければお終いだよ。」
「大げさなこと言わないで下さいよ。さ、一緒に考えましょう。」
私はそう一蹴したけれど、本当はやっぱり嬉しくてにやけそうになる顔を隠すのに必死だった。佐藤さんは私を喜ばせる天才だなんて浮かれた頭で考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます